|
|
「ハンチバック」 ★★☆ 文學界新人賞・芥川賞 | |
|
今回芥川賞を受賞した本作は、重度の身体障がい者である作者による、同様に重度ど身体障がい者である主人公の現実世界、それと同時に主人公の架空世界をあまねく描いたストーリィ。 作者がどのような障がい者であろうと、作品の出来不出来はそれと関係ない問題と思っていますが、本作については作者である市川さんの現実を抜きにしては語れません。 何故なら、自身の体験なくしては、主人公である伊沢釈華が抱える思いはとても書けないものであるからです。 「生きれば生きるほど私の身体はいびつに壊れていく」、という言葉は凄い。 また、重い紙の本には憎しみしか感じない、紙の本を喜んでいる健常者は呑気でいい、出版界は健常者優位主義だ、という言葉はショック以外の何物でもありませんでした。 重度の障害を抱えながら生きている、行動に制約はあっても、考えること、思うことに制約は受けない、という主人公の覚悟が圧巻。 男性介護者に差し出した1億5千万円の小切手は、健常者にとっては非常識、無駄遣いとしか思えませんが、それによって望みが一つ叶えられるのであれば法外なものではないのかもしれません。重度障がい者である人生を背負う重たさを、衝撃として感じさせられました。 本作を読んで思うことは、幾つも、ここに書ききれないくらいありますが、まずは自分で読んで実感することが、何よりのことと思います。 |