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2.無間道 3.水族 |
●「植物診断室」● ★★ |
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まず主人公像を紹介すると、水鳥寛樹、40代半ばの会社員。独身で結婚歴なし、湾岸に建つ高層マンションの21階で一人暮らし。 本書ストーリィは、そんな寛樹が妹夫婦を介して同僚の女性教師から、契約という形で大人の男性として息子に接してやって欲しいという依頼を受けるというもの。精神的な暴力を奮い続けた夫と漸く離婚したところだが、元夫は月に1回息子と会う権利を持っている。その元夫から息子が悪い影響を受けないよう、別の大人の男性と接する機会を設けてやりたいというのがその理由。 主人公と植物の関わりの深さ(植物診断とジャングリング、まるでジャングル探検行のような徘徊)から幻想的な面白味も感じる本書ですが、その一方、山葉一家と寛樹の関わりは現実的な、まもなく直面する社会的な問題ではないかと思います。 |
●「無間道」● ★ |
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もうひとつストーリィが飲み込めない、3篇。 最初の2篇は近未来が舞台だろうか。 外部からの押し付けによるのではなく、人が自分の意思で生きることを選ぶためには生死をかけるような覚悟がいる、ということかもしれません。 無間道/煉獄ロック/切腹 |
●「水
族」●(画:小野田維) ★★ |
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小説家と気鋭の画家によるコラボレーション。コーヒーブレイクにふさわしい、短い小説+画を提供する“Coffee Books”シリーズの一冊。 主人公が住み込みで勤めるようになった動物園の一角。そこでの彼の住まいは、湖底で六方がガラス張り、周囲には魚が泳ぎ回るという、まさに水中にいるような部屋。 彼が休日の度に出かける地上は、屋上植物がまるで雨林のように繁り、建物がある地上はまるで半地下。地上はもはや水浸しという様相を見せる“新水紀”。 コーヒーを飲む間、繰り広げられる水の中というイマジネーションを一時楽しむのも一興。本書はそんな一冊です。 【小野田維(おのだ・ただし)】 |