誉田龍一作品のページ


1963年大阪府生、学習塾講師。2006年自身初の時代ミステリー「消えずの行灯」にて第28回小説推理新人賞を受賞。

  


    

●「消えずの行灯−本所七不思議捕物帖−」● ★☆


消えずの行灯画像

2007年10月
双葉社刊

2009年05月
双葉文庫

(695円+税)

    

2009/06/06

 

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浦賀にペルリ提督率いる米利堅艦隊が渡来するという、世相穏やかならざる幕末。
そんな世相を反映するかのように次々と起きる怪事件。庶民からするとそれらはまるで“本所七不思議”に由来するかのよう。

事件ならば町奉行所に任せておけばよいものを、何故かしゃしゃり出てくるのが御家人次男坊の仁杉潤之助と、その蘭学塾の同門で友人でもある釜次郎
ただし、主人公の潤之助はさしづめワトソン役で、釜次郎こそホームズ役。さらに釜次郎と剣術仲間の今井信郎、噺家の次郎吉という常連メンバーが加わって計4人、まさに名探偵を囲む探偵団による推理劇という風です。
あろうことか、潤之助の兄嫁=千代までが困った純真さを振りかざし時々押しかけメンバーに加わるところは、ちょっとしたコメディ的な面白さです。

物の怪話の如き怪事件を科学的に解決するという対照の妙に本書の面白さがあるのですが、中世と近世の挟間にある幕末というそれに似つかわしい時代に舞台設定したところがお見事。
そして本題のミステリを越える面白さを味わえるのが、各章にゲスト登場する歴史上の有名人物たち。
冒頭作「消えずの行灯」の最後に明かされる釜次郎の正体に思わず唖然としたのですが、その後も出るわ出るわ、有名人物が各章で次々と。
謎解きよりも、今回登場しているのは一体誰なのか、そちらの正体明かしの方が余っ程面白いくらいです。
ホームズ役の釜次郎、正体が明かされてこそなおのこと気に入ってしまうのは勿論ですが、ゲストの中では「片葉の芦」千次郎が私は好きだなぁ。なかなか登場しない稀少人物ですし。

各事件、どんなカラクリか?に加え、アレは一体誰なのか? それを考え巡らすところが楽しい。是非当ててみてください。

消えずの行灯/送り提灯/足洗い屋敷/片葉の芦/落葉なしの椎/置いてけ堀/馬鹿囃子

 


  

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