辺見じゅん作品のページ


1940年富山県生、早稲田大学文学部卒。編集者を経て作家・歌人、角川書店の創業者で俳人でもある角川源義氏の長女、角川春樹・歴彦氏の姉。「闇の祝祭」(歌集)にて第12回現代短歌女流賞、「男たちの大和」にて第3回新田次郎文学賞、「収容所から来た遺書」にて第11回講談社ノンフィクション賞および第21回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。2011年09月逝去。

   


   

●「大下弘 虹の生涯」● ★★

   

1992年3月
新潮社刊

1999年11月
文春文庫化

   

1995/04/30

“青バット”のホームラン王・大下弘を語るノンフィクション。
稀な野球人の一人だったのだろうなあ、そんな野球人が存在し得た時代だったのだろうなあ、というのが、読了後第一に抱く思いです。
大下弘の魅力は、美しい軌跡を描くホームランと、底抜けに明るい人柄。
その一方で、金遣いが荒く、最初の結婚は幸せとは言い難いもの。さらに、ヒロポン中毒の母親、母親と嫁との対立。大下が後輩を連れて飲み歩き、家に帰ろうとしなかったのは、家庭がそんな状況だったからなのでしょうか。
マスコミから女遊びを叩かれながらも、見た目に明るく、そうした生活を送りながらも朝早くに起きて素振りをし、試合では安打を打ち、ホームランを打つ。天才的な打者と言うことに尽きるのでしょう。
最初は
セネタースに入団。そのセネタースは東急へ身売りし、東急フライヤーズ(現日本ハム)となる。球団代表との行き違い、そして“大下騒動”を経て、三原監督率いる西鉄(現西武)へ入団。“大下効果”はチームに活気を与え、平和台球場の観客数倍増をもたらす。そして、巨人との日本シリーズでは、3連敗から逆転の4連勝。
大下を語るには、三原氏の次の言葉が最適だと言います。
「日本の野球の打撃人を5人あげるとすると、川上、大下、中西、長島、王。3人に絞るとすれば、大下、中西、長島。そしてたった1人選ぶとすると、大下弘」
辺見さんは女性ですけれど、鋭く要点をついた書きぶりが、とても頼もしく感じられました。お見事と言うほかありません。
なお、表題の
「虹」は、大下の打つホームランの軌跡をイメージするものだそうです。

   


   

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