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「報道協定」 ★★ |
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幼い子供の誘拐事件。子どもの命を守るため、警察からはマスメディアに対し、誘拐事件にかかる報道の自制が求められます。 そのために警察とマスメディアの間で結ばれる協定が、すなわち“報道協定”。 主人公は東京中央テレビの社会部記者=諸橋孝一郎。かつて警視庁のキャップも務めた実力派でしたが、部下女性が起こしたヤラセ番組の責任を取らされ、要職から外されて今は遊軍記者という立場。 そこに大手IT企業<ツインズ>の社長である簗瀬拓人の幼い息子=翔太が誘拐され、犯人から身代金が要求されるという事件が発生。当然のこととして警察からはマスメディアに対し、報道協定の申し入れが行われます。 諸橋が思い出さざる得ないのは、14年前に起きた誘拐事件。その時も報道協定が締結されたものの、とあるブロガーが誘拐事件発生をかぎつけSNSに投稿、焦った犯人が誘拐した子どもを殺害するという悲劇につながった。 現場の人手不足の中、諸橋は強引に事件取材のスタッフに入り込みます。 報道協定が締結された中、マスメディアの記者たちはどう事件を追うのか。さらに14年前とは違ってネットニュースも数が増え、少しも息を抜けない。 そのネットニュース側の記者として登場するのが、かつて東京中央TVに在籍し、今はネットニュース<エターナル>の記者である在日韓国人女性アン・ジヒ、実績を上げられず契約解除の危機に瀕し焦っており、諸橋との連携を模索します。 ストーリーは、報道側の奮闘&競争が繰り広げられ、報道協定下での取材の難しさ、それと共に関係者それぞれの思惑の違いによる対立がリアルに描かれます。 警察においても、捜査員の個性という対立はあるでしょうけれど、マスコミ各社となれば会社同士の競争に加え、社内間での対立もありと、誠に多様。その多様ぶりがたっぷりと描かれます。 一方、ツインズビル内のエレベーターから、如何にして翔太は誘拐されたのか、犯人は誰なのか、その動機は、という謎が諸橋によって追求されていきます。 報道+事件という構成、ミステリという点ではやや物足りなさもありますが、報道側を主体にしてみれば十分な読み応えあり。 また、最後のスリリングな展開は、メディアが主役ならでは見せ場でしょう。 ※なお、会社員の浮き沈みは、本当に運不運がありますねぇ。 |