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2.東京箱庭鉄道 3.へんてこ隣人図鑑 4.ヤッさん 5.佳代のキッチン 6.東京ポロロッカ 7.ファイヤーボール 8.神楽坂のマリエ−ヤッさんU−(文庫改題:ヤッさんU 神楽坂のマリエ) 9.閉店屋五郎 10.女神めし−佳代のキッチン2− |
築地の門出、料理人の光、星をつける女、踊れぬ天使、穢れ舌、廃墟ラブ、ねじれびと、春とび娘、ヤスの本懐、ラストツアー |
間借り鮨まさよ、たわごとレジデンス、同居鮨、蕎麦打ち万太郎 |
●「トイレのポツポツ」● ★★ |
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尾篭な話ですが、表題は男子トイレ、それも便器の床下の、アレのこと。 まぁ、悪くなる会社というのはこうしたものか、これでは真面目な意欲ある社員は皆いなくなってしまうよな、と納得させられるだけのストーリィが展開していきます。 ワンマン中小企業だからこそ起きることだろうと思ったら、大間違い。 本書は、会社そして会社員というものの本性あるいは実態を、ユーモラスかつ軽快に描いた企業小説の佳作です。 トイレのポツポツ/ムカチョー/虹色のパレット/カチューシャ/ラブホ出勤/チェンイー |
●「東京箱庭鉄道」● ★★ |
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2011年10月
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「東京に二本のレールの上をがったんごっとんと走る鉄道をこしらえてほしい」 現代的な夢物語。 最終的にこの夢が実現するかどうかは別として、夢を抱き、その夢を実現するために頑張る、ということが如何に楽しいことかと改めて感じます。 ※最近温暖化防止策として路面電車が推奨されていますが、何故ロスアンゼルスから路面電車がなくなったか、何故都電の路線が大幅縮小されたのかという推論がストーリィ中開陳されているのも興味あるところ。 |
●「へんてこ隣人図鑑」● ★ |
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2009/11/06 |
へんてこな人間、を素材にしたショート・ショート。 味わいとしては、星新一さんのショート・ショートに近い。 ただヘンテコというだけでは面白くありません。やはり、最後にオチがなくては。 へんてこ隣人図鑑(きかれる男/へらず靴委員会/ホムリエ/ドアポケットの老人/わからん新婦/怒られクラブ/それ以前/スポーツのせいだ/ついで買い/踊る会議/見るな/安全弁の男/記憶更新研究所/下心がない男/穴を掘りたい男/株式会社真実の声/腹立つやつ/永遠のブランコ/押したい男/食べっぷり屋/アートライフ/待つ男/ライフ・スクリーン/百年モグラ)/ |
●「ヤッさん」● ★★ |
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2012年10月
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原宏一さん、東京箱庭鉄道という発想も楽しかったのですが、本書では「ヤッさん」なる人物のキャラクター設定がすこぶる楽しい。 ホームレス、グルメ、コーディネーターというおよそ釣り合うことのなさそうな無職・職種を一人の人物に集結してみせたところが、ユニーク。 ヤスさんが怪傑○○ばりの痛快な人物であることは言うまでもありませんが、ヤスさんと繋がる多くの登場人物が気持ち良い人物ばかり。そこが本ストーリィの楽しさであるといって、過言ではありません。 非現実的な面はあるものの、傑物ホームレスに弟子入りしたタカオの、気持ちよく愉快に、軽く楽しめる青春ストーリィ。 ホームレスのグルメ帳/ラブミー蕎麦/籠城レストラン/築地の乱/松の木コテージ/ターレの行方 |
●「佳代のキッチン」● ★★ |
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2013年07月
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佳代30歳の商売は、厨房設備を備え付けた軽ワンボックスカーを使っての“調理屋”。屋号は「佳代のキッチン」。 そんな料金で商売になるかというと、ワンボックスカーの中に寝泊まりしていてさえ、収支トントンという状況。それなのに何故そんな商売をやっているかというと、佳代が中学生の時に、佳代と弟の和馬を残して出て行ったきり消息不明となったままの両親を探すため。 弁当屋ではなく調理屋という着想が、まず秀逸。 そして、両親の足跡を追う佳代のワンボックスカーは、東京(新井薬師)、横須賀、京都、松江、東京(押上)、盛岡、函館と全国を行脚。ロードノベルの楽しさもいっぱいです。 佳代の健気な奮闘に拍手喝采。すこぶる気持ちの好い、連作風長篇ストーリィです。好いなぁ。 キャベツの子/ベア五郎/板前カレー/コシナガ/井戸の湯/四大麺/紫の花 |
●「東京ポロロッカ」● ★☆ |
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2013年12月
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“ポロロッカ”とは、毎年南米のアマゾン川で発生する、海からの高波で川が800kmも上流までドワーッと逆流する現象のことだそうです。 本書はそんな、多摩川が大逆流する、という噂に翻弄される人々のちょいとしたドラマを描いた連作短篇集。 とはいえ、篇を追うごとに、噂が大きくなり、信憑性が増してきたのか、具体的な動きまで生じてくるという展開が面白い。 大田区糀谷−居酒屋河ちゃん/大田区田園調布−徳大寺家/大田区下丸子−リバーサイドタワー/川崎市登戸−富士見荘/世田谷区二子玉川−柴口プランニング/調布市小島町−カフェ栞/川崎市川端町−かわばたハイツ |
●「ファイヤーボール」● ★★ |
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2015年09月
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家族を顧みる時間もなかった程の仕事漬けサラリーマンだった主人公、社内派閥抗争の影響で閑職に追いやられ、その上さらに早期退職を迫られる事態に。 何ら高尚なドラマがある訳ではありませんが、一旦読み始めると何時の間にやら引きずりこまれ、とにかく夢中になってしまう。2日続けて降りる駅を乗り越してしまった程です。 家族みんなで盛り上がる、初めて知る我が子たちの意外な活躍、子供たち側にしても仕事一辺倒だった父親の真骨頂を見る、という双方向コミュニケーションあり。また、どこかの既成政治家みたいに自分の利権確保のために姑息な手段を駆使して祭り企画を妨害する古株町内会役員との争闘もあり、という点も見処。 |
8. | |
「神楽坂のマリエ−ヤッさんU−」 ★☆ |
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お金を貯めて折角念願のカフェを神楽坂に開店したというのに、わずか3年で店を潰してしまった20代半ばの女性=マリエが本書の主人公。 痛快で新鮮な驚きのあった「ヤッさん」の続編。 ストーリィ展開は基本的に前作と同様。宿無しの“秘書”という称号をもらったマリエとヤッさんが、飲食店にからむ様々な困りごと、悩みごとの解決に貢献するというストーリィ。 |
9. | |
「閉店屋五郎」 ★☆ |
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2017年10月
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廃業等で不要になった機器・備品等を買い取り中古品として販売するという中古屋を営む五郎を主人公にした連作小説。 まとめて購入するには閉店に目を付けるのが効率的というところから異名をとって「閉店屋」という次第。 閉店屋という仕事柄、五郎は様々な人の困りごとに出会うことになります。ビジネスを逸脱し、採算を度外視してつい相手に肩入れしてしまうことも度々というストーリィ。 この五郎のキャラクターはというと、大食漢で 100kgを超える巨体、妻子を放ったらしにして女遊びに呆けていたのがたたって20年前に離婚され一人暮らし、今でも美女に惚れっぽいのが欠点という人物。 美女に惚れっぽくどこか腰がフラフラしているけれども純情ではあるという点は「フーテンの寅さん」を思わせます。もっとも実業を商っている点では五郎の方に軍配が上がるというべきでしょう。 |
10. | |
「女神めし−佳代のキッチン2−」 ★★ |
2017年05月
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原宏一作品はストーリィ設定のユニークさが極め付けに楽しいのですが、「ヤッさん」と並んで「佳代のキッチン」もその代表格。本書はその第2弾です。 軽ワンボックスカーの荷室を改造した厨房車で全国各地を巡りながら営む佳代の商売は、材料を持ち込んでもらい注文に応じて調理するという“調理屋”。 前作で両親探しの旅に区切りをつけた佳代、今回は松江のスミばあちゃんの依頼に応じて各地の港町を巡り、シングルマザー等の事情で苦労している人で調理屋の仕事をやってみようという候補者を探す旅をします。 また今回は、“調理屋”だけでなく魚介めしの弁当販売も。 ストーリィは能登半島の港町“氷見”を振り出しに、伊豆下田の多々戸浜、東京湾に面する船橋、広島県は尾道、大分県の佐賀関を巡って、最後は長崎県・五島列島の福江島まで。 新しい土地での新しい出会いが魅力のロードノベルの楽しさに加え、各地の日常食的郷土料理を知り(空想で)味わう嬉しさを満喫できる連作ストーリィ。 そんな本書の楽しさを味わえるのも、厨房車で全国各地を巡る“調理屋”という設定があってこそです。 「女神めし」ではサーファー達からの佳代人気が圧倒的、「ミンガラーバー!」では佳代がミャンマー料理に挑戦します。 「ママンのプーレ」では佳代にフランス人の相棒が出来、どういう展開になるのか少々ドキドキ。「ツインテールの沙良」では父親と共に福江島にやってきた小1少女=沙良の健気さに胸打たれましたね〜。 是非、続刊を期待したいところですが、作者である原宏一さんの心積もりはどうなのでしょうか? 1.港町へ/2.女神めし/3.ミンガラーバー!/4.砂浜の夢/5.ママンのプーレ/最終話.ツインテールの沙良 |
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