半村 良作品のページ


1962年SF小説のコンテスト入選を機に作家デビュー。73年「産霊山秘録」にて泉鏡花文学賞、75年「雨やどり」にて直木賞を受賞。2002.03.04死去。

  


  

●「江戸打入り」● ★★

 

1997年08月
集英社刊
(1800円+税)

1999年12月
集英社文庫化

 

1998/01/15

北条攻めという天下平定の最後となる大合戦を、一軍の将ではなく、鈴木金七郎という徳川方一兵卒の側から書いている作品。
他にそうした作品を読んだことがないだけに新鮮でしたし、こんな風な会話、動き方になるものかと興味つきませんでした。まるで、現代の歯車のひとつとしてのサラリーマンを見るようではありませんか.(^_^)

高橋孟「海軍めしたき物語」という本で、軍艦の料理番は、大海戦の最中も船の中でただひたすら食事の準備をしていたという話が書かれていましたけれど、ついそれを思い出してしまいました。

江戸へ移り住むあたりのことがかなり詳しく書かれているのかと思って読み始めたのですが、その部分は最後に少し書かれているだけでした。
でも、それなりの緊張感をもたらしていた北条攻めの後、急展開するように江戸入りが決定し、憤懣やるかたない思いをしつつも、その末には腹を据えて笑い飛ばすあたり、曇り空から晴れ間の覗いたような爽快感がありました。
そこから最後の文章まで、一気に進展しますが、まさしく江戸入りの様を象徴するかのようで見事な書きっぷりです。
男達の一方で、
おえん、およね、お茶阿の方等の登場があり、それも楽しいです。

 


 

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