遠藤彩見(さえみ)作品のページ


東京都生。1996年脚本家デビュー。TVドラマ「入道雲は白 夏の空は青」にて第16回ATP賞ドラマ部門最優秀賞を受賞。2013年「給食のおにいさん」にて作家としてもデビュー。同シリーズは累計26万部のベストセラー。


1.給食のおにいさん

2.キッチン・ブルー

3.千のグラスを満たすには

 


           

1.
「給食のおにいさん ★☆


給食のおにいさん

2013年10月
幻冬舎文庫刊
(686円+税)



2015/12/01



amazon.co.jp

主人公の佐々目宗は、何度もコンクール等で賞を獲得している腕利きの調理師。しかし、とかく人とぶつかってしまう性格のためどこの職場も長続きせず、何とか自分の店を開店したと思ったらすぐに火事を出してしまい閉店。
資金が底をついてやむなく職に就いたのが、
東京都S区立若竹小学校の臨時給食調理員の仕事。という訳で“給食のおにいさん”と呼ばれる立場になったという次第。

給食調理員になっても自分のシェフとしての腕を見せつけたいという欲求が抑えられず、年下の上司で栄養管理士の
毛利恵太とたびたび対立。しかし、給食の現場や今の小学生たちの状況を知らぬままの言動は、結局いつも反省ばかり。
とはいえ、嫌いだった筈の子供たちと接するに連れ、子供たちが抱える問題、給食を通じて少しでもそれらの問題に対処しようとする毛利の奮闘を知るにつれ、これまでの自分に欠けていたのは何であったのかを宗が気づいていきます。

さしづめ、現代の給食事情と、料理師としてあるいは人間として佐々目宗の成長を描くストーリィ。
子供苦手の佐々目宗と、「ささめー」「ささめー」と遠慮なく近付いてくる子供たちとの関わり合いが楽しい。

なお、何かと佐々目宗の頭を押さえつけようとする毛利恵太の人物像をどう捉えるか、読者によっていろいろと違いが生じるような気がします。
私が見る処、丁寧な口調で「子犬顔」であるにもかかわらず、自分の思い通りに事を進めるため周到に策を巡らし、時には膝裏蹴りという実力行使も厭わない、策謀家。
また同時に、ひとつの事に捉われて人との円滑なコミュニケーションを欠くところがあるという点で、毛利恵太と佐々目宗は相似形の人物像と思います。
さて、皆さんのご意見は如何でしょうか。

「進級」「卒業」「受験」と本シリーズは計4冊。
 それにしても私たちの頃の給食とはエラい違いですよねェ。

春 スパイス/初夏 スプーン/夏 スー・シェフ/秋 グリル/冬 キャセロール

               

2.
「キッチン・ブルー」 ★☆


キッチン・ブルー

2015年11月
新潮社刊

(1400円+税)

2018年07月
新潮文庫化



2015/12/15



amazon.co.jp

“食”あるいは料理をモチーフにした短篇集はこれまでも数多くありましたが、本書は味覚障害等々、特に“食”にまつわ悩みを主体に様々なドラマを描いた短篇集。
食事となればあって当たり前、でもそこに悩みが生まれれば冗談事ではなくなります。たかが食事、されど食事、だからこそ悩みは深くなるというものです。
それ故に、切実で、他人事とは思えないドラマがいろいろ楽しめるという訳です。

本書中、特に面白かったのは「食えない女」と「さじかげん」の2篇。
「食えない女」の主人公は、人と一緒に食事をすることができないという“会食不全症候群”に苦しむ古谷灯、独身36歳。やっと楽に付き合える男性と知り合ったものの・・・。
結末にはちょっと驚かされましたが、覚悟を決めたらしい灯にはエールを送りたい気持ちです。

「さじかげん」の主人公=青山沙代、人気ブランドショップの店長ですが、料理は苦手。料理上手の母親に育てられた夫=周平に悪気はないようなのですが、毎度料理にダメ出しされ・・・。
私自身の経験からしても、これはある意味、不可避のドラマではないでしょうか。今にして両者の気持ちが判るというものですが、最後のオチ、それこそ賢明な解決策ではないかと思う次第。

最後の
「ままごと」、ブラックユーモア的な悲喜劇のように感じます。
主人公の水戸健一は、売れ始めた俳優ながら極貧生活。金持ちの令嬢が自分の作った料理を食べてくれる相手が欲しいという訳で、その相手を務めますが・・・・。
まぁ最後に主人公が立ち直れたなら、それで良しとしますか。


食えない女/さじかげん/味気ない人生/七味さん/キャバクラの台所/ままごと

                 

3.
「千のグラスを満たすには How to Fill a Thousand glasses ★★


千のグラスを満たすには

2018年11月
新潮社刊

(1500円+税)



2018/12/22



amazon.co.jp

「千のグラス」とは、シャンペンタワー作るのに必要な数多くのグラスのことを指すようです。
そして、豪華な
“シャンペンタワー”と言えば、キャバ嬢たちがナンバーワンの象徴として目指すもの。
という訳で、本作の舞台は
キャバクラ
といってもキャバ嬢たちの人生や一時のキャバ嬢生活を描くドラマではなく、キャバクラを舞台にしたお仕事小説なのです。

キャバクラといっても、そこで働いているのはキャバ嬢だけでなく、いろいろな人が関わっています。
老舗の高級キャバクラ
“ジュビリー”で8年間に亘りナンバーワンの座を手中にしてきたキャバ嬢=リコをプロローグで華やかに登場させた後は、「ツアコン」と呼ばれるランク低位のキャバ嬢、キャバ嬢の送迎を行うトライバー、キャバ嬢向け美容室で働くヘアメイク、フロアでキャバ嬢の付け回しを行う指名係を描く。そして最後を締めるのは、キャバ嬢のナンバーワン争い。

いやー、華やかな表側に対して裏側の何とシビアなことか。
でもそれは当たり前でしょう。キャバ嬢といえば個人営業みたいなものでしょうから。そしてその商売を支える裏方の人たちも無関係ではいられない。

一般社会とはかけ離れた観のあるキャバクラ世界。各章ストーリィはそれぞれの主人公にとって死活問題がかかっているだけに、リアルで読み応え十分、あー面白かった、です。
(私自身は一度も行ったことがないのでまるで別世界です)

最後はリコの颯爽とした姿が格好良かったです。歯切れも良し。

※キャバ嬢の仕事を選んだ若い主人公の奮闘を描いた作品に、桂望実「Lady, GOがあり。

プロローグ/ツアコン/ドライバー/ヘアセット/指名係/ナンバーワン

    


   

to Top Page     to 国内作家 Index