遠藤寛子作品のページ


1931年三重県生、三重大学を経て法政大学史学科卒。卒業後教職の傍ら創作に勉。69年「深い雪の中で」にて第1回北川千代賞、74年「算法少女」にてサンケイ児童出版文化賞を受賞。

 


   

●「算法少女」● ★★☆




1973年10月
岩崎書店刊

2006年08月
ちくま学芸
文庫

(900円+税)

 

2007/09/11

 

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「算法少女」、実際に 200年前の江戸で出版された算法の書だそうです。
作者は千葉桃三という医者で、あきという娘が手伝ったらしい。その書の内容を調べていくうちに遠藤さんの中で育ったひとつの物語、それが本作品とのこと。

主人公は千葉あき。大阪生れの医者である父親・桃三が大の算法好きで、その指導を受けたあきも算法に長けている少女。
あるとき武家の少年が神社に奉納しようとしていた算額を見てその誤りに気付く。そのことが思わぬ評判となり、算法好きの久留米藩主・有馬候から姫君へのお相手役としてあきに声がかかります。しかし、上方の算法に引けを取るわけにはいかぬと、江戸の関流算法学者がそれを差し止めようとして・・・というストーリィ。

短いストーリィの割りに登場人物は多いのですが、各々個性的で楽しい。その中でも、あきから算法を学ぶ子供たちの生き生きとして嬉しそうな姿がとても印象的、心に残ります。
算法(=数学)を趣味や高尚な学問に留めるのではなく、実用の学として広く世の中のために用立てることが大切。そのためには流派に捉われず良いものをどんどん取り入れていく姿勢、町人という身分や、女、子供にこだわらず算法を広めることが大切。
それらのことを判り易いストーリィで優しく語っているところが本作品の素晴らしさです。

本作品は単行本が絶版になった後、長く再刊されなかったそうです。多くの人の声があってやっと文庫本として復刊されたそうですが、こうした優れた作品はどんどん復刊して、大いに宣伝して欲しいものです。

      


   

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