壇上志保
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福岡県生、本名・紺野真美子、元刑務官。2002年長塚節文学賞大賞、2003年らいらっく文学賞佳作、08年木山捷平短編小説賞を受賞。10年長篇小説「ガラスの煉獄−女刑務官あかね−」を刊行。現在は山形県居住。
14年、夫君=今野信吾氏との共著(共著筆名:紺野仲右ヱ門)「女たちの審判」にて第6回日経小説大賞を受賞。

 


           

「脱獄者は白い夢を見る」● ★★


脱獄者は白い夢を見る画像

2012年08月
新潮社刊
(1600円+税)

  

2012/09/16

  

amazon.co.jp

出版社のサイトに、「フランス・ミステリ風の目眩む展開」という題名で池上冬樹さんの書評が掲載されていたので、どんなに複雑で心理的なミステリかと思っていましたが、左程のことはなく結構読みやすいサスペンス。
元刑務官という異色の経歴を持つ檀上さん、その経歴を生かした長篇作品としては本書が2冊目ですが、私は前作を読んでいないので、本書においては舞台となる女子刑務所の様子がまず興味津々でした。

主人公は矯正処遇官の職位にある結城桐子。その桐子、普段大人しい受刑者2人が、時を別にするものの突然暴れ出すという事件の原因を調べることになります。そんな中で桐子が注意を引きつけられたのは、60代過ぎの受刑者=広瀬はしめ
ストーリィはその桐子を主人公とする部分と、広瀬はしめが第一人称で語る部分が、交互に展開する構成。
前者では刑務官を視点にした女子刑務所の様子が語られますが、同時にそれは広瀬はしめによる脱獄の伏線になっています。そして後者は、広瀬はしめという受刑者の半生が描かれる部分。
両方とも物珍しく興味津々、面白く読み進む中で終盤、広瀬はしめの脱獄が起き、刑務官たちが動揺します。広瀬はしめを再び拘束するまでに許された時間は48時間、というサスペンス。

本書の魅力は、広瀬はしめ、桐子と後輩刑務官の小野春香という3人のキャラクターにあります。広瀬はしめは本作品における準主役ですから当然のことですが、一方の桐子と小野春香に関しては、本書一作限りでは十分その持ち味が発揮されたとは言えませんし、一作だけで終わるには余りに勿体ないキャラクター。
(小野春香は曾祖母から
夢摘みという能力を受け継いだ女性)
そんな訳で、桐子と春香の2人が再度活躍する続編を是非望みたいところです。

                 


   

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