大道珠貴
(だいどうたまき)作品のページ


1966年福岡県福岡市生。2000年「裸」にて第30回九州芸術祭文学賞を受賞し作家デビュー。03年「しょっぱいドライブ」にて 第128回芥川賞、05年「傷口にはウオッカ」にてドゥマゴ文学賞を受賞。

 
1.


2.
きれいごと

 


 

1.

●「 裸 」● ★☆    九州芸術祭文学賞

 
裸画像

  
2002年10月
文芸春秋刊
(1381円+税)

2005年05月
文春文庫化

   
2003/03/02

  
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ストーリィとも言えないような展開のまま終わってしまう中篇ですけれど、印象に残ったのは、九州に根付いた作品であること。
登場人物の話し言葉は九州弁ですし、いかにも九州(私の先入観かもしれませんが)という登場人物ばかり。
女性であることに拘束されず、また売り物にもせず、あるがままの姿で生きていれば良いじゃないかという逞しさ、開き直りが各篇の主人公から感じられて爽快。その辺りが、本書の特徴でしょう。
表題作の「裸」では、「あんたも若い頃から身体をみがいとったほうがよかよ」という言葉を、ホステスのバイト中である19歳の主人公に向かって吐く伯母の存在感が大きい。その伯母との対比において主人公が描かれていると言う他ありませんが、女性の生々しさが存分に出ている一篇。
「すっぽん」は、可笑しみある一篇。お茶販売店で働く33歳の女性が主人公ですが、この主人公どこかとろいところがあるらしい。少女時代は悪餓鬼集団というべき親戚の男共にいいようにあしらわれ、ここ13年程は一人暮らし。
それでも泰然とし、ブラジャーやパンティをはずして開放感を味わいつつ、自分の腕のたくましさに満足する最終場面は、快感すら覚えます。
「ゆううつな莓」は、中学生の女の子が主人公。しかし、そのユニークさ、とても言葉では言い表せません。

裸/スッポン/ゆううつな莓

      

2.
●「きれいごと」● ★☆


きれいごと画像

2011年12月
文芸春秋刊
(1450円+税)

  
2012/01/12

  
amazon.co.jp

アラフォーで一人暮らし、一応小説家である平尾美々44歳が主人公。
家族もいないのに山の上に立つ古民家を買い、もう後がないからそろそろ妊娠でもしようか、50歳までに子供3人、と勝手な計画を思いめぐらす。
現在住むアパートの隣人である子持ちのおばさんと一時期レズだったり、若い男を精子提供者として狙ったり、等々。
何やらとんでもない行動に走り出すうえ、何とあけすけな物言いをすることか。呆れるべきなのか共感すべきなのか、正直言って困惑するばかりです。

感情抜きにセックスを生物的に眺めるところ、姫野カオルコさんと似ているところを感じますが、姫野さんがそれなりに真面目一本であるのに対し、ずばりあけすけに語ってみせるところが大道さんらしいところかなと思います。
結局何を語ろうとしていたのか、十分理解できたとはとても思えないのですが、女性も一人暮らし&アラフォーともあると、もう何でもあり、ということなのでしょうか。

なお本作品、「初めてなのに優しいひと」「身重で身軽」「きれいごと」という3つの短編を下敷きに新たに長篇として書き下ろした、とのことです。

    


  

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