東芙美子
(あずまふみこ)作品のページ


1965年東京都生、日本大学芸術学部放送学科卒。アパレル企業、テレビ番組制作プロダクション勤務を経てフリーの放送作家。主にドキュメンタリー、情報系番組を手がける。

 


           

「梨園の娘 ★★☆


梨園の娘画像

2013年12月
KADOKAWA刊
(1700円+税)

  

2014/01/29

  

amazon.co.jp

梨園=歌舞伎界の人気美男役者である京二郎(藤村霞右衛門)に生まれた子供は双子。男子は、女子はと名付けられます。
歌舞伎役者ならば跡継ぎとなる息子の誕生を喜ぶ筈のところ、京二郎が喜んだのは娘の誕生。その葵を京二郎はまさに掌中の珠といった具合に愛しみます。
その京二郎の役者としての資質を継いでいたのは、桂ではなく葵だった、というところから、ややこしい本ストーリィは始まります。
役者の世界に魅せられ自分も歌舞伎役者になりたいと小さな胸に情熱を滾らせるものの、女児である故に葵はやがてその世界から締め出されてしまいます。
その現実から葵は女優を志そうとしますが、京二郎は断じて許さない。その裏事情を知っている所為か、可愛い娘をそんな魑魅魍魎が蠢く世界に入れるものか、という決意。兄貴分の
凱史(十一代目皆川翔十郎)と組んで、ことごとく葵の夢を潰しにかかります。その度外れたやり方には、葵ならずとも読み手もまた茫然とするばかり。しかし、そんな葵にも密かに手を差し伸べる人がいて・・・。

歌舞伎界の二大怪獣vs.役者の才能に溢れた若芽、親の偏愛vs.宿業的な情熱という、人間同士の意地をかけた長年に亘る対決ストーリィ。
これはもう、面白くって堪りません、予想外の面白さ!
何度も酷薄な仕打ちを受けながらも諦めることなどなく役者の道に向けて突き進もうとするヒロインが魅力。最後にヒロインが叫んだ一言は、まさに圧巻です。
芝居の世界の面白さもありますけれど、男対女、親対子の闘争ストーリィですね、基本構成は。それにプラスして、根っからの役者という奴は・・・という群像劇。
面白さ、読み応えとも、もうたっぷりです。


発端/知盛の道行/花泥棒/発芽/剪定/流刑/鬼界ヶ島/御赦免船の涙/温室の花/日陰の花の咲く場所/日蝕/白夜/花守人/獅子の座/出雲の阿国

                 


   

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