阿津川辰海
(あつかわ・たつみ)作品のページ


1994年東京都生、東京大学卒。2017年新人発掘プロジェクト「カッパ・ツー」により「名探偵は嘘をつかない」にて作家デビュー。23年「阿津川辰海 読書日記 かくしてミステリー作家は語る」にて第23回本格ミステリ大賞<評論・研究部門>を受賞。


1.午後のチャイムが鳴るまでは 

2.バーニング・ダンサー 

  


       

1.

「午後のチャイムが鳴るまでは ★★☆   


午後のチャイムが鳴るまでは

2023年09月
実業之日本社

(1700円+税)



2023/11/14



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学園青春もの、連作ミステリ。
舞台は、私立九十九ヶ丘高校における、9月9日木曜日。
その同じ日、僅か65分に過ぎない昼休みの間に、全ての謎は生まれ、その全ての真相が解かれる、という趣向です。

「RUN! ラーメン RUN!」:禁止されている昼休みの外出、校則を破ってのラーメン屋行きは成功するのか?
「いつになったら入稿完了?」:イラスト担当のアマリリス先輩を追いかけた処、その姿が消え失せた?
「賭博師は恋に舞う」:マドンナと言われるの女子生徒への告白権利を賭けて<消しゴムポーカー大会>が繰り広げられます。しかし、相次ぐイカサマ? その結果は・・・。
「占いの館へおいで」:ふと聞いてしまった謎の言葉は、どういう意味?

「過去からの挑戦」:七不思議の一つとなった17年前の女生徒消失事件の真相が、今明かされる!

どの篇も高校時代だからこその、友情、恋といった青春も模様が描かれているところが楽しい。
そして
「第五話」は、まさしく第一話から第四話までの集約編であると同時に、年月を超えたミステリ解決&恋成就というべきストーリィとあって、興奮尽きません。

僅か65分という時間の中で5つの謎を解き明かした名探偵は誰なのか? 各篇登場人物たちの相互関係を解きほぐすところも楽しみいっぱいです。
類稀な趣向に、爽快な学園青春ミステリ。お薦めです。


1.RUN! ラーメン RUN!/2.いつになったら入稿完了?/3.賭博師は恋に舞う/4.占いの館へおいで/5.過去からの挑戦

               

2.

「バーニング・ダンサー ★★   


バーニング・ダンサー

2024年07月
角川書店

(1750円+税)



2024/08/18



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警察対犯罪者という警察事件ものなのですが、追う方も追われる方も超能力者(コトダマ遣い)という点が特色。
したがって、双方が対決する場面でのバトルが見もの。

2年前、某国に隕石が落下。すると、全世界に 100人のコトダマ遣いが出現(各自一つ、それぞれ別の超能力を持つ)。
当然ながら予想されるのは、コトダマを遣った犯罪。
それを防止するため、警視庁に設置されたのが、<
コトダマ研究所>、そして<公安部公安第五課コトダマ犯罪調査課(略称:SWORD)>。
自らもコトダマ遣いである課長の
三笠葵によって集められたのは六人のコトダマ遣い+外部嘱託員一人(研究所研究員)。

折しも、
「燃やす」コトダマ遣いによる二人の焼死体が発見される。ただちに六人による調査が開始されます。

主人公は元捜査一課の刑事で相棒をコトダマ遣いに殺されたばかりの
永嶺スバル「入れ替える」コトダマ遣い。捜査経験からチームの班長を任されます。
ただ、他のメンバーというと、捜査経験があるのは田舎の駐在所から異動してきた年配警官一人。それ以外は、警察署の交通総務課勤務だった双子、女子大学生、金髪の大学中退者とてんでバラバラ。
果たして永嶺、そうしたメンバー、彼らの能力を束ねて犯人に迫ることができるのか。

捜査方法も普通の警察ものとはちょっと異なります。何しろコトダマを遣って犯人に迫るのですから。
そして、コトダマを遣った対決とはどんなものなのか。
そこが興味尽きないところで、圧巻の面白さ!

なお、半分くらいの処で私に最終犯人が見えてしまった点が残念なのですが、それでもやはり終盤は思いがけない展開が待ち受けていた、といって間違いではないでしょう。

本作、これ一冊で終わるとはとても思えません。予想される今後の事件、バトルが楽しみです。


1.セッション−始まり/2.ホムラ/3.顔合わせ/4.目撃/5.二つの殺人/6.ロカールの原則/7.「硬くなる」/8.「聞く」/9.過去の殺人/10.熱/11.ローラー作戦/12.潜伏生活/13.「吹く」/14.逃亡/15.「放つ」/16.接触/17.「伝える」/18.別の線/19.「伝える」・2/20.三人目の死者/21.トリック/22.張込み/23.思考の戦い/24.可能性の戦い/25.未知の殺人/26.記者会見/27.信念の戦い/28.想定/29.真相/30.犯人/31.勝利/32.結末/33.後始末/34.セッション−終わり

        


  

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