芦沢 央(よう)作品のページ Mo.2



11.神の悪手

12.夜の道標 

13.魂婚心中 

【作家歴】、罪の余白、今だけのあの子、許されようとは思いません、雨利終活写真館、獏の耳たぶ、バック・ステージ、火のないところに煙は、カインは言わなかった、僕の神さま、汚れた手をそこで拭かない

 → 芦沢央作品のページ No.1

 


                   

11.
「神の悪手 ★☆


神の悪手

2021年05月
新潮社

(1600円+税)

2024年06月
新潮文庫



2021/06/09



amazon.co.jp

将棋を題材にしたミステリ、5篇。

将棋に興味が無い方なので、将棋主体のストーリィに今ひとつ興が乗らなかったのですが、ミステリの多彩さ、意表を突かれる展開と、その趣向の見事さに唸らされます。

どこにミステリがあるのか分からないまま読み進み、主人公が気づかないでいた真相が明らかになって初めてミステリと気づく、というパターンです。

「弱い者」:被災地の避難所にボランティアとして将棋を指しに出向いた北上八段。相手をした小6くらいと思われる少年の才能に興奮します。しかし、少年は時々信じられない愚手を平気で指す。一体何故?
「神の悪手」:奨励会に4年、未だ昇段を掴めない啓一は、先輩の村尾が考えた、翌日対局する相手への戦略メモを手に入れます。しかし、当日啓一は究極の岐路に立たされてしまう。
「ミイラ」:将棋誌に投稿される詰将棋の検討を手伝っている主人公。詰めが不成立とした判定への反論が編集部に届いたという。すれ違いの理由は?
「盤上の糸」:8歳の時の交通事故で両親を失い、自分も失認障害に至った亀海要。向島久行との対局の行方は・・・。
「恩返し」大学講師を辞職して駒師になった兼春。棋将戦で国芳棋将が兼春が作った駒を選んだことで、やっと自立できたと感激します。しかし、その直後信じられないことが起こり、衝撃の余り兼春は気力を失ってしまう・・・。

5篇中、
「弱い者」「ミイラ」の2篇が私は好きです。

弱い者/神の悪手/ミイラ/盤上の糸/恩返し

             

12.
「夜の道標 Signposts in the Night ★★


夜の道標

2022年08月
中央公論新社

(1650円+税)



2022/09/08



amazon.co.jp

本ストーリィ、交互に4人の人物の視点から描かれます。
まずは
中村桜介。バスケ好きな小学生。
次いで
橋本波留。その友人で、バスケに卓越した才能あり。しかし、ろくでなしの父親から車への当たり屋をやらされている。
そして
長尾豊子、惣菜店でパート。自宅の半地下室に、元同学年生だった殺人犯を匿っている。
さらに
平良太郎。横浜市旭区の旭西署の刑事。しかし、直属上司と折り合いが悪く、露骨に窓際に追いやられている。
現在、2年前に起きた学習塾経営者の殺人事件、未だ発見されていない被疑者=
阿久津弦の捜査を押し付けられている。

桜介を除く他の3人、それぞれ不遇とも言える状況にあります。だからこそ各自のドラマにまず惹きつけられます。

その一方で惹きつけられるのが、殺人犯だという阿久津弦という人物。子供の頃からどこか脳が未発達or障害?というところがあるらしい。
しかし、その阿久津の恩師とも言え、周囲の評判も良かった学習塾経営者の
戸川勝弘を、何故阿久津は殺したのか。それがミステリと言えばミステリ。

訳のよく分からないまま、それなりに読まされていた本ストーリィが俄然として面白くなるのは、終盤に至って阿久津が行動をし始めてから。それからの展開がまさに圧巻です。

気づくと、本ストーリィの中には様々な対比があります。
健全な境遇にある少年と不遇な境遇にある少年。家族に恵まれた人間と孤独な人間。主流にある人間と窓際に追いやられている人間、我欲だけで他人を顧みない人間、等々。
それら一人一人と、阿久津弦という人物を比べてみる面白さもあります。
自分らしく生きるためには、わがままを通すことが必要なのか。
変わった趣向のミステリですが、私は好きです。

              

13.
「魂婚心中 Soul Marrige and Other Stories ★★


魂婚心中

2024年06月
早川書房

(1700円+税)



2024/07/09



amazon.co.jp

様々な趣向のストーリーから成る短篇集。
SF的なものもあれば、ファンタジー、そしてヴァーチャルものもあり、という感じ。
芦沢さんといえばミステリというイメージが強かっただけに、ちょっと驚きあり。それと同時に、こんな奇想をよくもまぁ、という興奮もあり。

一見、パラバラな短篇と思えますが、芦沢さん曰く、いずれも人と人との関係性を主軸にしている点で共通性あり、とのこと。
確かにそうですね。

「魂婚心中」:“魂婚”とは死後結婚のこと。
単なる儀式が、欠かせないものと変化した社会が舞台。
<推し>に熱中するとこうなるのか、という話。
「ゲーマーのGlitch」:ヴァーチャルゲームの実況中継。
「二十五万分の一」:嘘つくと消えてしまい、その人物がいたことも忘れ去られるという世界。<二十五万分の一>とはそういう意味か、という処が、私好み。
「閻魔帳SEO 」:天国は一つ、地獄は七つ。何処行きとなるかを決める<罪業と善行の一覧>が表示される世界。
何でもビジネスに結びつけようとする輩はいますね。
「この世界には間違いが七つある」:殺人事件発生? でも秩序が重要? そうかァ、そういうことか。
「九月某日の誓い」:我がままお嬢さまと、彼女に仕える女中という2人。その特殊能力とは・・・?

いずれの篇も、それらの奇想を巧みにまとめあげる芦沢さんの筆さばきがお見事。
奇想という点では、表題作の「魂婚心中」、「二十五万分の一」「閻魔帳SEO 」の3篇が面白い。
また、ストーリー展開という面では、「魂婚心中」「二十五万分の一」「九月某日の誓い」が好きです。


魂婚心中/ゲーマーのGlitch/二十五万分の一/閻魔帳SEO/この世界には間違いが七つある/九月某日の誓い

         

芦沢央作品のページ No.1

        


   

to Top Page     to 国内作家 Index