有吉玉青
(たまお)作品のページ


1963年東京都生。90年母・佐和子との日々を綴った「身がわり」にて坪田譲治文学賞を受賞。

 


   

●「ティッシュペーパー・ボーイ」● ★★




2007年02月
新潮社刊
(1400円+税)

 

2007/03/16

 

amazon.co.jp

主人公もストーリィも全く別々の4篇ですが、ただひとつ、街頭で配られるティッシュペーパーがきっかけとなって主人公たちの人生が一変するストーリィ、というところが共通点。

誰しも悩みを抱え込んだりして人生の岐路にぶつかることは当然にあること。本人たちにとっては重大なこととはいえ、傍から見ると割と平凡な悩みに過ぎない、ということはよくあります。
そんなとき、何かが背中を後押ししてくれることによって新たな人生の局面が開けるかもしれない。そんなことがあったらさぞ嬉しいこと。
そんな役割を果たすのが、街頭でティッシュペーパー・ポーイが配るポケットティッシュである、というところが本書の楽しいところ。
そんな些細なもので人生が開けるということは、つまりは自分の気持ち次第なのであるということなのですが、そう理屈だけでは人は動けないもの。都会の何処ででも日常的に見かけるようなティッシュペーパーひとつで人生が開けるかもしれないと思うだけで、とても楽しくなります。

4篇の主人公は、恋人と別れるつもりで待ち合わせ場所に急ぐ途中の若い女性、妻との結婚生活に失望を抱く男性、職場でも家庭でも軽視されている中年男と援助交際に走る女子中学生、年下の男との恋愛関係が進まずに悩むバツイチ女性、自分の才能に自信がもてない女性タレント。
人間的で平凡なチマチマした悩み(小説的なドラマに比べると)を抱え、焦ったり、迷ったり、落ち込んだりしている主人公たちの姿がとても愛しく感じられます。
都会生活の一片を見事に切り取った短篇集。このストーリィさばき、お見事と素直に言いたい。

グッド・ラック/ビーツって何?/レオン/恋が花盛り/ボーイを探せ!

 


   

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