青柳碧人
(あおやぎ あいと)作品のページ


1980年千葉県生、早稲田大学教育学部卒。2009年「浜村渚の計算ノート」にて講談社の公募企画「Birth」の第3回受賞者に選ばれ作家デビュー。


1.未来を、11秒だけ 

2.怪談刑事 

  


       

1.

「未来を、11秒だけ ★☆


未来を、11秒だけ

2019年07月
光文社

(1500円+税)

2021年05月
光文社文庫



2019/08/18



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仲間数人が持つちょっとした特殊な能力を絡めたミステリ。

眠った場所における24時間後の未来が11秒だけ見える。
連作短編にすると面白そうだなぁと思ったのですが、本作は長編ミステリ。

主人公の
篠垣早紀は、新宿で思わぬトラブルに巻き込まれそうになったところを、ジョージという男性に助けられます。
そして早紀は、とりあえずそれ以上の難を逃れるという理由で、ジョージが暮らす
<FREEDOM TREE>というシェアハウスにその日一晩厄介になりますが、そこに住む7人の住人たち、若いエミリをはじめ、それぞれいろいろ事情を持っているらしい。

その後日、ジョージと同室で暮らしているという女性
キャロが、失踪したまま音信不通。キャロの身に何か危険が?
協力を求められた早紀は、友人で元ホストの
星川司を呼び寄せます。実は司も、ジョージ同様、ある特殊な能力の持ち主。
そこから、ジョージ、早紀、司、若い女性住人のエミリが主体となってキャロの行方探しが始まります。
なお、やはり住人の一人であるロイまでいなくなり・・・。

ジョージ以外に、星川司もある特殊能力を持っている人物。そしてさらに、主人公の早紀にも・・・、そして・・・。

ホームズ役は星川司でしょうか。早紀はさしづめワトソンか。
警察や探偵ではないので現場検証が出来ず、その代わりを特殊な能力が埋める、そしてそれを基に推理を行う、という展開。
 
実はある犯罪事件絡み?と思いきや、結局はマイナーな問題に帰結してしまったところが物足りず。個性的な人物が集まっての群像劇のようなミステリという点は面白かったので、勿体なかった感あり。
仲間が集まってのシェアハウス生活、なんていうのも面白そうでしたね。

       

2.

「怪談刑事(デカ) ★☆   


怪談刑事

2024年03月
実業之日本社

(1700円+税)



2024/04/26



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深川署刑事課に所属していたベテラン刑事=只倉恵三・55歳が異動辞令を受けた先は、警察庁「第二種未解決事件整理係」
そこは怪奇現象絡みかと思われる未解決事件を再調査する部署で本庁地下4階に所在、
通称「呪われ係」と呼ばれている。

恵三が着任すると、その部署内は、髑髏を磨く男や、木の板をカッターナイフで削っている女、係長からして黒い眼帯と、怪しいどころが奇態な、といった同僚たち。
そのうえ、一人娘の日向が家に連れてきた彼氏だという
関内炎月は、「怪談師」だという。

ともかくも事件解決に邁進する只倉ですが、その度に怪談のネタが欲しいという炎月が絡み、「怪談なんか嫌いだ」、「怪談じゃなくしてやる!」とばかりに恵三が事件を現実的に解決してみせる、というのが毎度のパターン。
しかし、本当に怪談要素はなかったのか・・・。

刑事という割に、恵三の行動は捜査というより、推理。安楽椅子探偵型に近い。
それぞれに一応面白いのですが、トリックの面白さという点では
「トンネルとマヨイガ」が読み応えあり。
また、展開の面白さという点では、恵三が炎月の怪談ライブに引っ張り出され、怪談師たちと対決するという趣向の
「対決・仏像怪談」を評価したい。
ともかくも、ベテラン刑事&怪談師による“ミステリ&怪談”もの連作。


繰り返す男/猫に憑かれた女優/トンネルとマヨイガ/物の怪の出る廃校/対決・仏像怪談/生霊を追って/エピローグ

    


  

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