青波 杏
(あおなみ・あん)作品のページ


1976年生、東京都国立市出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。近代の遊郭の女性たちによる労働問題を専門とする女性史研究者。2022年「揚花の歌」(「亜熱帯はたそがれて−厦門、コロニアル幻夢譚」を改題)にて第35回小説すばる新人賞を受賞し作家デビュー。

  


       

日月潭の朱い花 ★★   


日月潭の朱い花

2024年07月
集英社

(2000円+税)



2024/08/06



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表題にある“日月潭”とは、台湾の中央部にある台湾最大の湖(ダム湖)で、観光名所だそうです。

本作は、日本統治時代の、そして現代の台湾を舞台にした、女子たちの生き方模索+少女失踪事件の謎解明ストーリー。

主人公の
長澤サチコは25歳、傷つき果てた末に日本を出て、今は台中にある日本語学校に勤めている。
そのサチコのアパートに居候しているのが、子どもの頃に出会っていたという
朴(パク)ジュリで、ヒキコモリの様相。

そのジュリがサチコの誕生日にプレゼントしてくれたのは、古物商で見つけた革のトランク。何とその内張りの奥に2人が見つけたのは、日本統治時代の台湾で高等女学校に通っていた日本人少女=
桐島秋子の日記帳。
それ以来ジュリは、桐島秋子について調べることに熱中、そして見つけたのは
「日月潭に少女消える」という当時の新聞記事。

一体、桐島秋子に何があったのか? ジュリとサチコはその謎を追うことになります。
その結果、2人が巻き込まれたのは・・・・。

日月潭という響きには魅了されますし、少女たちのシスターフッド的ストーリーは雰囲気が良く、読んでいて楽しい。
また、日本統治時代の台湾の様子には興味尽きません。
しかし、それぞれのアイデンティティ問題を描くストーリーと、最後の思いもよらぬ展開は、無理矢理くっつけたようでバランスが取れていないように感じられてなりません。

ただ、魅了される処は多分にありますし、今後への期待を含め、★二つ評価。


1.台北、初夏/2.日記をたどる/3.八月の光/4.秋の日のラプソディー/5.幽霊たち/6.帰還/エピローグ

           


  

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