安東みきえ作品のページ


1953年山梨県甲府市生。94年「ふゆのひだまり」にて第11回小さな童話大賞、「いただきます」にて同選者賞今江祥智賞、2000年「天のシーソー」にて第11回椋鳩十児童文学賞、18年「満月の娘たち」にて第56回野間児童文芸賞を受賞。


1.
頭のうちどころが悪かった熊の話

2.天のシーソー

3.夕暮れのマグノリア

4.呼んでみただけ

5.ワンス・アホな・タイム

6.ゆめみの駅 遺失物係

7.満月の娘たち

 


     

1.

●「頭のうちどころが悪かった熊の話」●(絵:下和田サチヨ) ★★


頭のうちどころが悪かった熊の話画像

2008年11月
理論社刊

(1500円+税)

2011年12月
新潮文庫化

2010/10/30

mazon.co.jp

「小さな童話大賞」今江祥智賞を受賞した「いただきます」を含む動物寓話7篇。

いずれも生きる意味について考えるストーリィになっています。児童向け短篇集ですけれど、常にひとつピリリと、人生の厳しい面が隠し味として付け加えられているところが、本寓話集の妙味。

「頭のうちどころが悪かった熊の話」は、何かの所為で頭を打って一部の記憶を失ってしまった熊が、レディベアって何?と探しまわるお話。ユーモラスですけれど、意外に人生の深淵を感じる一篇でもあります。

旅人が出会ったトラから彼の悩みを聞いてあげる「いただきます」、オタマジャクシとヤゴの友情を描いた「池の中の王様」の2篇が私は好きです。
なお、最後を飾る「お客さまはお月さま」は、綺麗な光景が思い浮かぶ一篇。

頭のうちどころが悪かった熊の話/いただきます/ヘビの恩返し/ないものねだりのカラス/池の中の王様/りっぱな牡鹿(おじか)/お客さまはお月さま

     

2.

●「天のシーソー」● ★★☆       椋鳩十児童文学賞


天のシーソー画像

2000年04月
理論社刊

(1300円+税)

2012年08月
ポプラ文庫化


2010/11/03


amazon.co.jp

小学生であるミオの、ごく普通の日々を描いた連作形式のストーリィ。
児童向け作品にも優れた作品がたくさんありますが、本作品で何より素晴らしいと感じるのは、小学生であるミオの目線に立って感性豊かに描かれていること。

後から思えば何でもないような、ごく日常の出来事が積み重なって少女時代が築かれていく、本書を読んでいるとまさにそうしたことに気づきます。
妹のヒナコとは年中ケンカばかり。このヒナコが、実にかわいくない妹なんです。妹も母親も、ミオの思い通りには行動してくれない、ミオの気持ちを理解してくれない。でも、そんなことの繰り返しが、むしろ普通の少年少女時代でしょう。。

そんなミオの日々の中にも、やはりミオの成長はあります。近所に住む年上の少女に労わられていた時期から、逆に幼い兄弟の相手をしてやり、同級生と心と心の触れ合いがあったり、妹のために勇気をふりしぼって行動しようとすることも。

理屈ではなく、家族との触れ合い、同級生との触れ合い、見も知らぬ他人との触れ合いを通じて、日々成長していく少女の姿を描く、瑞々しい作品。お薦めです!

ひとしずくの海/マチンバ/針せんぼん/天のシーソー/ラッキーデイ/毛ガニ

   

3.

●「夕暮れのマグノリア」● ★★


夕暮れのマグノリア画像

2007年05月
講談社刊

(1300円+税)



2010/11/04



amazon.co.jp

続けて読んだ所為か、天のシーソーの後にくる物語、という印象が強い。主人公も中学生になったばかりの少女=灯子という設定でもありますし。
中学生ともなれば、同級生との関わりも小学生の時ほど単純ではありませんし、感情のすれ違いと、いろいろあって当然。それは成長の過程でのことなのですから。

1章ずつ、同級生等々との関わりを通じた成長物語の一片を積み重ねる、という構成が小気味良い。
収録6篇の中でも、ちょっとファンタジー風な展開がストーリィの鍵となる
「雪幽霊」「マーブルクッキー」の読後感がことに爽やかです。
特に前者、幽霊を邪なものとしてではなく、灯子たちを応援する善良なものとして描いているところが秀逸。
物事を前向きにとらえようとする、灯子という少女の内面がそこに投影されている気がします。

また、灯子がひそかに意識している関田くんとの触れ合いを描いた「黒森の宵まつり」、同級生である凛さんの立ち位置といい、この篇もまた中々楽しい光景を見出すことができます。
本書、私好みの成長物語です。

プロローグ
竜宮の使い−美帆ちゃんとのふしぎな五月−
循環バス−凛さんとのふしぎな七月−
真実のハート−千夏とのふしぎな九月−
黒森の宵まつり−関田くんとのふしぎな十一月−
雪幽霊−きぃちゃんとのふしぎな一月−
マーブルクッキー−おばちゃんとのふしぎな三月−
エピローグ

            

4.

●「呼んでみただけ Just Called You」● ★★☆


呼んでみただけ画像

2010年09月
新潮社刊

(1400円+税)



2010/10/20



amazon.co.jp

6歳の息子・遊太に請われてママが物語るお話の数々、等の趣向からなる12章。
ママは娘の頃からお話を作るのが大好き。
お星さんがしてくれたお話もある、木がしゃべっているのを聞いちゃったこともある、川から流れてくるのを掬ったこともある、というママのお話を遊太はいつも楽しそうに聞いてくれる、という、ママと遊太のお話し集。

自分で本を読むより、語ってくれるお話を聞く、という方が幼い頃には楽しかったと思います。
お話をするのが好きなママと、お話を聞くのが好きな遊太。この母子の様子が実に楽しそう。
ママが語るお話だったり、遊太が見た夢だったり、各章のお話は様々ですが、どのお話もとても楽しい。
それ以上に素晴らしい点は、この2人に親子という上下関係が感じられず、お話しを通じてまるで友達同士、同好の仲間同士、という雰囲気があるところです。
その温もりが実に素敵なんだなぁ。
そして、遊太に向けた目線には、愛し子の成長を喜び、一方でその成長を寂しがるママの愛情が感じられて、この点もお見事。

一見、子供向けのお話集と思えるかもしれませんが、本書は大人にこそ向けたお話し集。子供の頃にお話をしてもらった時の楽しさが、懐かしさいっぱいに蘇るようです。

私の好みからすると「へそまがりの魔女」が第一なのですが、冒頭の「星に伝えて」とか「冬の花咲いた」「サメのいる海」、「大地のえくぼ」等も良いんだなぁ。(※要はどのお話も皆良いということですが。)

星に伝えて/永久歯/ストロベリーショートケーキ/月夜の影ふみ/冬の花咲いた/きょうりゅうのタネ/サメのいる海/モグラのねぐら/大地のえくぼ/へそまがりの魔女/ふっくらすずめ/あるところとないところ

      

5.

「ワンス・アホな・タイム」 ★★


ワンス・アホな・タイム画像

2011年11月
理論社刊

(1400円+税)



2015/02/15



amazon.co.jp

「むかしむかし、あるところに・・・」といったお馴染みの出だしで始まる、童話的ストーリィ7篇。

「ワンス・アホな・タイム」というギャグ的な表題とユーモア交じりの各篇題名から、おふざけ的な短篇集かと思ってしまうのですが、いやいやとんでもない、どれもとても楽しく、そして温かさに満ちている優れもの短篇集なのです。

「むかしむかし・・・」童話で描かれたハッピーエンドって、実は短絡的にして単純、現代にもってくると展開や結末も随分と違うのだろうなぁとはっきり感じさせらたのが、本短篇集です。
「おめざめですが、お姫さま」のお姫さまの達観は見事な処世と思いますし、「バカなんだか利口なんだか」の若者の価値観は極めて現代的で思わず笑ってしまう。
また、
「きみの助言」「魔法のパンの実」では、思いも寄らなかった○○○で読み手を楽しませてくれます。
「呪われた王子たち」の王子兄弟も、現代若者像にそっくりと言って差し支えないと思います。

本書の登場人物の中では、
「魔法のパンの実」の主人公である少女国王、「呪われた王子たち」の脇役である娘が、私は好きだなぁ。
なお、最後の飾る
「木霊の住む谷」、いつまでもどこまでも響き伝わっていくような余韻に情趣があって、素敵です。
児童向け本ですが、お薦め。

おめざめですか、お姫さま/バカなんだか利口なんだか/きみの助言/魔法のパンの実/ウミガメの平和/呪われた王子たち/木霊の住む谷

     

6.

「ゆめみの駅 遺失物係」 ★★


ゆめみの駅画像

2014年12月
ポプラ社刊

(1400円+税)

2017年09月
ポプラ文庫化


2015/01/31


amazon.co.jp

がっかりすることに慣れ切ってしまった女子中学生の主人公、電車の中でふと独り言を呟いてしまった時、乗り合わせたおばあさんが「いしつぶつがかりに行ってみたらいいですよ」と言われます。
いつもの
由米美濃駅で降り、駅舎の奥にあった渡り廊下のような長い通路を進むと、つきあたりに「遺失物係」という看板の掛かっていたドア。
遺失物係の男の人に訊ねられて、主人公は自分が失くしたものが「おはなし」だったと気付きます。
「拾得物語台帳」を取り出した係の人が曰く、
「拾われて届けられた物語は、ぜんぶここに保管してあります」と。

月曜日に始まり、主人公は毎日のように遺失物係に通い、係の若い男の人に拾われた様々な物語を読み聞かせてもらいます。
それは主人公だけでなく、様々な人が失くした物語を探しに遺失物係を訪れてきます。
そこで語られた幾つもの物語、果たして主人公は自分の物語を見つけることができるのでしょうか・・・。

拾われた物語が届けられる場所、という不思議なシチュエーションも魅力なのですが、主人公が訪れる度に遺失物係が読んでくれる不思議な物語の数々も、何とも魅力。
それに連れて主人公の心が少しずつ解けていくような歩みにも、心がほんのり温まる気がします。

月曜日(冬のひだまり)/火曜日(飛べない鳥)/水曜日(バク)/木曜日(夢のおうち)/金曜日(幸福の蝶)/土曜日(まっくらけっけ)/日曜日(青い人魚とてんとう虫)

              

7.

「満月の娘たち ★★      野間児童文芸賞


満月の娘たち

2017年12月
講談社刊

(1300円+税)



2018/
01/20



amazon.co.jp

母親と娘との関係って、どこでも同じような傾向があるのでしょうか。母親はいちいち干渉したがり、娘はその度に煩がり、反抗心をもたげる、といったような。
(我が家の母娘関係も、似たところがありますねー。)

本作の主人公は中一の
志保
同じ中一生の
美月は、同じ病院で同じ日に生まれたことから、幼いころからの親友づきあい。
美月から誘われて志保は、近所で幽霊屋敷と噂されている古い洋館、今は誰も住んでいない<
昭和邸>に忍び込みます。
すぐバレて叱られた志保は、母親に命じられ、昭和邸の現在の持ち主であるという
五嶋繭の元へ謝罪に行かされます。
おかげで、ドールハウス作りをしている若い繭と知り合った志保は、ちょうど保育園からの付き合いである
祥吉が繭と親しげなところに受け入り、自分も美月と共に繭のところへ出入りするようになるのですが・・・。

何かと干渉しいつも命令口調の母親に反感を覚える志保、兄ばかり大切にし自分を軽視する母親に寂しさを抱えている美月、そして亡くなった母親に対して繭も・・・。

母娘関係が本作の主テーマだと思いますが、それだけでなく、志保と美月の友情、中一生の幽霊屋敷冒険というストーリィ要素も魅力充分。
女性読者なら共感を覚えるところ多い作品だと思いますが、男性である私としては祥吉が好きだなぁ。

    


   

to Top Page     to 国内作家 Index