天沢夏月(あまさわ・なつき)作品のページ


1990年生、東京都出身。2012年投稿作「サマー・ランサー」にて第19回電撃小説大賞(選考委員奨励賞)を受賞し、翌年同作にてメディアワークス文庫より作家デビュー。


1.ヨンケイ!!

2.
青の刀匠

 


                   

1.
「ヨンケイ!! ★★


ヨンケイ!!

2021年01月
ポプラ社

(1500円+税)

2023年07月
ポプラ文庫



2021/02/11



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高校陸上部、100mX4人リレー、いわゆる“四継”に挑戦する部員たちを描く部活もの青春ストーリィ。

舞台は伊豆大島にある渚台高校の陸上部。部員は男子3名・女子1名とたった4人。
そこに本州からの転校生が新入部員として加わります。
奇跡的に4人のスプリンターが揃ったことから、顧問教師の
サトセンは400mリレーをやりませんかと提案。
というのは、自分もかつて四継をやって得るものがすごく大きかったから、と。

しかし、たった5人だけの陸上部だというのにこの4人、仲は良くないし、おまけにコミュニケーション不足。だからバトンもうまく渡らない。
各章、4人それぞれを第一人称の主人公にして胸の内、そして徐々に進む心境の変化を語らせる、という構成。

ブラコン&やっかみ、自信なさ過ぎ、挫折による前の高校からの逃げ出し、ストイック過ぎ、と各人の葛藤は様々。
高校生という年代の少年たちらしく、ふとしたきっかけでバトンが繋がれるようになり、そして互いの気持ちも揃っていく、そんな展開が爽快です。
 
4人の気持ちが揃い合わさって走りが加速していく、という気持ち好さ、これはもう快感ですね。

なお、4人の背後に、彼らの走りを応援する2人の陸上女子部員がいることを軽視できません。彼女たちの存在も、部活青春ものの気持ち好さを高めてくれています。

一走、.受川星哉/ニ走、雨夜莉推/三走、脊尾照/四走、朝月渡

               

2.
「青の刀匠 ★★


青の刀匠

2022年11月
ポプラ社

(1600円+税)



2022/12/27



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火事に遭い、身体と心に傷を負った高校生の沙(いさご)コテツ、父親も意識不明状態となったことから、遠縁の剱田かがりという老齢女性の元に身を寄せることになります。
東京から島根の海沿いの町へ。その剱田かがりは、日本でただ一人の女性刀鍛冶だった。

転校先の高校へ登校したものの、左頬の火傷痕へ向けられた皆の視線に耐えられず、コテツは家に引き返しそのまま不登校となってしまう。
学校に行かなくてもいいがそれなら仕事を手伝え、というかがりの言葉にしたがって炭切りの作業を始めたコテツでしたが、何の意味も遣り甲斐も感じられず・・・。

LINEでただ一人繋がった同級生の
土屋春樹から「何のために刀作っちょう?」と問われたコテツは、かがりの弟子であるコウ、カンナと関わり合いながら、その答えを求めていきます。

先に何の展望も持てず、何処にも行けなくなったコテツが、刀鍛冶という特殊な作業場所で再び前へ進む気持ちを取り戻すまでの再生&刀鍛冶という特殊な世界を描いたストーリィ。

コテツの再生に刀鍛冶という仕事がどう関係するのか、という点が判りませんでしたが、最後になってようやくその意味が判ります。
それはともかくとして、劔田かがりという女性刀匠の人物像が実に味わいあり。噛み締める程に滋味たっぷり、という感じです。

ちょっと変わり種の青春成長ストーリィと言って良いでしょう。
どういう意味があったのかは、読んでのお楽しみです。


1.玉鋼/2.炭/3.不純物/4.融雪/5.萌芽

       


   

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