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「僕たちの青春はちょっとだけ特別」 ★★ 学園ミステリ大賞 Aosaki Kazuki's special first semester |
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高等支援学校を舞台にした、学園日常ミステリ。 私にとって高等支援学校というのは、全く新しい世界であり、最初から最後まで驚きの連続でした。 事件はすべて、舞台である私立明星高等支援学校の中での出来事であり、探偵役となるのは、入学したばかりの青崎架月という一年生。 通常のミステリ小説と異なるのは、本作で起きる事件や謎が、高等支援学校が舞台だからこそ、軽度知的障碍を持った生徒たちだからこそ起きたもの、という点です。 また、読み手にとっては、どの生徒がどんな問題を持っているのか(架月も含め)、それも謎の一つなのです。 その点、読み手は新一年生の青崎架月と同じ状況に置かれているといって良いでしょう。 一口に軽度知的障害といっても、その有り様は実に色々。生徒一人一人の特徴が各々異なっていますから、教師たちの側も生徒それぞれの特徴に合わせて指導していくことの、何と大変なことかと思います。 教師たちが“一年生”の御三家という、架月、須田莉音、深谷純は、中学校での評価がダントツに悪かったらしい。 また彼らと関わりの深い上級生、斉藤由芽、折原利久、新田優花という生徒たちも、ある意味で個性豊か。 知的障碍があるからと言っても、もちろん彼らが悪い人間であるということではありません。主人公の架月にしろ、怒られるとパニックになり泣き出してしまうという問題点はあっても、基本的には素直で優しい性格の持ち主。 事件の謎を解こうとするのも、大事な人を傷つけたくない、守りたいという気持ちからなのですから。 四色紙吹雪事件、ロッカー移動事件、生徒失踪事件。それらは本作において事件となっても、一般社会でならそう大したことではないことでしょう。 でも、その真相や謎を明らかにしようとする中で、お互いを知ろうとし、仲間意識を深めていく、それに伴い自分自身もちょっと成長する、そうした展開が素晴らしい。 ここにも青春と、将来への希望がしかとあります。お薦め。 プロローグ/第一章〜第三章/エピローグ |