秋吉理香子作品のページ


早稲田大学第一文学部卒。ロヨラ・メリマウント大学大学院にて、映画・テレビ番組制作修士号取得。2008年「雪の花」にてYahoo!JAPAN文学賞を受賞。09年同作を含む短篇集「雪の花」にて作家デビュー。


1.機長、事件です!

2.
婚活中毒


3.鏡じかけの夢

 


                   

1.

「機長、事件です!−空飛ぶ探偵の謎解きフライト− Captain Detective ★☆


機長、事件です!

2017年03月
角川書店刊

(1500円+税)



2017/04/17



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航空会社の国際線パイロットを探偵役に据えた、軽快な連作ミステリ。
“航空機”“旅行”という単語を聞くと、つい手が出てしまうんですよねー。という訳で秋吉理香子さん初読みです。

主人公は成田発シャルル・ド・ゴール行き 205便が国際線デビュー(副操縦士)となるニッポン・エアラインのパイロット=
間宮治郎
ところが治郎が搭乗する 205便の機長はニッポン・エアラインきってのエリート・パイロットであると同時に、毒舌でめーちゃくちゃ厳しく、その冷たい美貌から「アイス・クイーン」の異名をとる女性パイロットの
氷室翼
その2人に加え、チャラいが優秀な第二機長の
幸村操雄、世界的コンツェルンの令嬢でチーフパーサーの多岐川麗美という2人を加えた4人が主要な登場人物となり、往復フライト、ステイ先であるフランスにおいて遭遇した事件を、氷室翼が鮮やかに解決して見せるという構成です。

“空飛ぶ探偵”というからには、ステイ先で起きる事件より、やはり航行中の機内で起きる事件の方が面白い。何といっても緊迫感が違いますし、究極の密室内での発生事件ですから。

「氷の女王」:プロポーズのための指輪が何と機内で紛失?
「クリニャンクール事件」:何故治郎はフランスの美女たちから急にモテ始めたのか?
「修道院の怪人」:モン・サン・ミッシェル観光に出かけた4人、そこで殺人事件に遭遇。
「機上の疑惑」:突然苦しいと助けを求めてきた前途有望な少女ピアニスト。彼女を救うにはどうしたらよいのか?

ミステリ以上に、航空機運航にかかる蘊蓄、氷室翼と間宮治郎の掛け合い漫才のような会話が楽しい一冊。


氷の女王/クリニャンクール事件/修道院の怪人/機上の疑惑

              

2.

「婚活中毒 "Marry Me" Addicts ★★


婚活中毒

2017年12月
実業之日本社

(1300円+税)



2018/01/03



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<婚活>を題材にした、コミカル風味に味付けされた連作ミステリ。

「理想の男」吉本沙織39歳が紹介された杉下圭司は、思いがけず理想的な相手。しかし、念のためこれまで紹介を受けて彼が付き合った3人の女性のことを調べると、いずれも死去していることが分かり、沙織はふと圭司に恐れを感じる・・・。
「婚活マニュアル」:このままではいけないと婚活パーティに参加した矢部圭介は、看護師で後輩先輩の間柄だという、美女の上原愛奈とブスの田淵靖子という2人に出会います。ライバルを押しのけて愛奈から指名を獲得した圭介、順調に交際は進むものと思われましたが・・・。
「リケジョの婚活」:人気TV番組の<ミッション縁結び>、電子工学を専攻して今は電機メーカーでロボット開発に取り組んでいるリケジョの後藤恵美30歳が主人公。一目惚れした舘尾典彦の指名を獲得するため、データ分析、果てはバーチャル<典彦>まで創り上げてシュミレーションに怠りなく本番に臨んだのですが、確率は1/13。
「代理婚活」:息子のため親同士による代理婚活に臨んだ益男と邦子の夫婦。ところが益男が相手の母親である久恵にすっかり魅了され、久恵にまた会いたいが為に息子の孝一が縁談に乗り気という嘘をつい繰り返してしまい・・・。

まぁ<婚活>というのは目的がはっきりしていますから、その為の作戦というものが生まれても不思議ないもの。「婚活マニュアル」において女子は流石に逞しい、経験の薄い男子が太刀打ちできる訳がないと、圧倒されながらも納得感あり。でも、男女逆のことがあっても不思議ありませんし。

圧巻なのは「リケジョの婚活」。データ分析のみならずバーチャルまで創り上げる処は流石リケジョと感心させられますが、最後に明らかになった手には呆気に取られるばかり。これはもう国盗りゲームのようなものかと、思わずギリシア神話の世界を思い出してしまいました。
※本篇、日本推理作家協会賞(短編部門)にノミネートされた作品とのことですが、むべなるかな。


理想の男/婚活マニュアル/リケジョの婚活/代理婚活

                    

3.
「鏡じかけの夢 


鏡じかけの夢

2018年05月
新潮社刊

(1400円+税)



2018/06/23



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評価がひとつとなったのは、作品の出来不出来という以前に、私がこうしたストーリィを好きではない、というに尽きます。
鏡とか自画像とかいうものは元々敬遠したいところがあり、それに加えて、望みが叶うなんて薄気味悪いという他ありません。
その類は、オスカー・ワイルド「ドリアン・グレイの肖像」だけで十分というのが正直な気持ち。
それなら何故読んだのかと問われると、答えようもありません。元々読む前に少々迷うところはあったのですが。

ヴェネツィアで作られた金属製の鏡。心を込めて鏡を磨けば望みが叶うという言い伝えあり。
しかし、望みは叶えられるものの、それは決して幸せをもたらすわけではない、という点がこの鏡の曲者たるところ。
というか、所詮は鏡に善悪、良否を判断する能力はない、ということなのでしょう。
要は西洋の鏡を題材とした連作もの怪綺譚。

「泣きぼくろの鏡」:精神病院に入院する奥様。彼女を気遣う優しい旦那様に、看護師は自分が彼の奥様になりたいと願う。
「ナルキッソスの鏡」:自分の想いが叶えられることのない鏡研ぎ職人、一転してその相手に恨みを抱き・・・。
「繚乱の鏡」:顔に醜い火傷痕を今も残す男。その財力を魅了された歌劇団の少女のために尽くすのですが・・・。
「奇術師の鏡」:敗戦後の貧しい中、奇術に才能を見せる少年を世に送り出してやりたいと、敗残兵は鏡に祈る・・・。
「双生児の鏡」戦争で孤児となった双子の姉妹、ヴェネツィアに辿りつきサーカス団の団長に救われるのですが・・・。

泣きぼくろの鏡/ナルキッソスの鏡/繚乱の鏡/奇術師の鏡/双生児の鏡

     


   

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