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1.ひとり旅日和 2.ひとり旅日和−縁結び!− 3.ひとり旅日和−運開き!− 4.ひとり旅日和−福招き!− 5.ひとり旅日和−幸来たる!− 6.深夜カフェ・ポラリス |
「ひとり旅日和」 ★★ | |
2021年10月
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主人公の梶倉日和(ひより)は24歳、オフィス用事務機器・文房具を取扱う小宮山商店株式会社に入社して2年目。 元々人とのコミュニケーションが大の苦手で、就活戦線も敗北続き。大学指導教官の斡旋で、ようやく小宮山商店に入社できたという経緯。 入社して総務課に配属されたものの、ミスが多い、表情が陰気だと、係長の仙川道広から度々会議室に呼び込まれては叱りつけられることの繰り返し。 いい加減自分でも嫌になるところですが、久しぶりに面談する機会が生じた社長の小宮山正夫から、よくやっている、弱い者いじめへのストレス耐性が強いのかもと励まされます。 その際に小宮山から是非と勧められたのが“ひとり旅”。 4年先輩の同僚で旅行好きの加賀麗佳からもアドバイスを貰い、日和は初めてのひとり旅へと乗り出します。 旅好きにとっては、とにかく楽しい。 旅初心者である日和と共に旅を共にする、という感覚のストーリィですが、初心者であろうが何であろうが旅とは楽しいもの。 そして、ひとり旅の経験を重ねて、徐々に自信を覚え、日和が成長していくという展開もやはり楽しい。 さらに、旅の過程で恋人といえるような男性と知り合えれば言うこと無いのですが、その点は読んでのお楽しみ。 ※私も独身時代、毎月のように旅行していた時期がありますが、当時と比較するとホテル状況は格段に良くなりましたね。 日和、旅先にて一人で居酒屋に入り、お酒まで注文するようになりますが、私には無理だったなぁ。酒は弱いですし、刺身とか苦手で避けていましたし。 ひとり旅に関心あるが、まだひとり旅をしたことがないという読者に、手引書となるような一冊です。 なお、旅のお供には是非、文庫本を2、3冊とお勧めします。 1.熱海−茹で卵と干物定食/2.水郷佐原−蕎麦ととろとろ角煮/3.仙台−牛タンと立ち食い寿司/4.金沢−海鮮丼とハントンライス/5.福岡−博多ラーメンと鯛の兜煮 |
「ひとり旅日和−縁結び!−」 ★☆ | |
2022年10月
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人見知りのOL=梶倉日和(本巻では25歳)が一人旅を通じて少しずつ成長していく姿を描きつつ、各地への旅行気分を読者に堪能させてくれる、“ひとり旅日和”シリーズ第2弾。 自称“人見知り女王”も一人旅を幾度か経験して今や“人見知り姫”程度には成長した、というのが主人公=日和の述懐です。 題名末尾の「縁結び!」は、前回の旅で出会い憧れの男性となった吉永蓮斗(れんと)と自分は縁があるのだろうか?という、日和の願いを込めたもの。 さあ、本巻の旅先でまた、2人の出会いはあるのでしょうか。 日和に対して嫌味な直属上司=仙川係長の冷たい態度、後輩社員で「総務課のアイドル」と呼ばれる霧島結菜への依怙贔屓は相変わらず。 それでも先輩社員かつ一人旅の助言役である加賀麗佳は、いつも日和を励ましてくれますし、日和の仕事ぶりを正しく評価してくれる上司として斎木総務課長の存在も頼もしい。 なお、吉永蓮斗は、麗佳とその恋人である間宮浩介と高校同級生以来の友人関係。 なお、函館は雪の中での旅、房総は日帰り旅行、大阪はたこ焼きを食べるための旅、出雲では初めてレンタカーを利用、姫路は麗佳に頼まれて。 本巻での日和の旅先は、私も独身時代に旅していろいろ思い入れのある処もあり、懐かしく感じます。 ただその分、些かダレる感じを持ったのは、私自身として残念なところ。 また、私はお酒を飲まないし、いろいろ好き嫌いもありましたから、日和のように現地の居酒屋等でお酒と郷土料理を楽しむ、などということは無かったですね〜。 私の嗜好以外に、時代の違いも大きいと思います。何しろ当時はスマホもなく、分厚い時刻表を小さめのバッグに入れて先へ先へと急ぐような旅でしたから。 本シリーズ、まだまだ続きそうです。 1.函館−ご当地バーガーとウニ丼/2.房総−メロンパンと城の名の酒/3.大阪−たこ焼きと肉吸い/4.出雲−出雲そばと鯛飯/5.姫路−えきそばとひねぽん |
「ひとり旅日和−運開き!−」 ★☆ | |
2023年10月
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“ひとり旅日和”シリーズ第3弾。 人見知り女王だった梶倉日和も、一人旅を重ねることによってそこは大きく成長してきたようですが、本巻においては旅における新鮮な感動、といったものが薄れてしまった観があるのが残念なところ。 また本巻での旅、“旅”というより“観光旅行”といった印象が強い所為があるかもしれません。 行った先でのレンタカー利用もその印象を高めています。 ・宇都宮:日帰りでの餃子賞味行。 ・和歌山:パンダの親子観覧整理券が抽選で当たり、パンダを見るために日和、和歌山へ。 ・奥入瀬と秋田は連続篇。秋田で一人住まいしている叔母=加世の体調がすぐれないらしい。病院嫌いの叔母にきちんと診察を受けさせるという使命を負って日和、奥入瀬観光のついでにという名目を立てて、秋田県小坂町の叔母の元へ。 小坂町では日和、叔母の案内で、明治から続く有名な演芸場<康楽館>の見物等々。 ・最後は沖縄へ。台風に見舞われてバスツアーが中止となり、私が行けなくなった美ら海水族館にも日和は脚を伸ばします。 本巻は、新型コロナ感染下におけるストーリィ。 そのため日和、旅に出かけてよいやら迷うことも多く、吉永蓮斗(れんと)に相談したり、旅行についてアドバイスを貰ったり、土産に地元の銘酒を持ち帰ってきたりと、日和と蓮斗の関係が着実に進展しているように思えます。 1.宇都宮−餃子三昧/2.和歌山−マグロ丼とめはり寿司/3.奥入瀬−川魚と煎餅汁/4.秋田−アカシアの天ぷらそばときりたんぽ鍋/5.沖縄−沖縄そばと海ぶどう |
「ひとり旅日和−福招き!−」 ★☆ | |
2024年10月
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“ひとり旅日和”シリーズ第4弾。 人見知り女王だった梶倉日和も、もうすっかり一人旅し慣れたようです。旅先でレンタカーを借りて一人で観光地巡りとは、電車・バス主体だった私には到底及ばぬところ。 その一方、じれったいほど発展しないのが、吉永蓮人との関係。 それでも本巻中において、これから二人の仲が進展していくような兆しを感じ取れる部分があります。そこが本巻の楽しみ。 ・長野:善光寺、小布施、渋温泉。 小布施や渋温泉の<外湯巡り>、特に後者が懐かしい。 ・名古屋:蓮人から教わった“一筆書き切符”を使って、東京から長野、そして名古屋へ。 ・東京お土産宴会:麗華・浩介の自宅マンションで、蓮人と日和も旅行の土産を持ち寄っての宴会開催、という篇。 ・高知・愛媛:足摺岬、宇和島、道後温泉へ。 足摺岬での<足摺海底館>、すっかり忘れていただけに、とても懐かしいです。日和はレンタカーなので、さらに宇和島から松山と簡単に移動していますが、列車だととても行きにくい状況でした。そのため四国一周旅行でしたが、宇和島行きは諦めたのでした。 ・宮崎・鹿児島:何と言っても<高千穂峡>が懐かしい。 私はバス・列車を使って熊本〜高千穂〜宮崎へと移動しましたが、日和は高千穂神楽を観るため一泊し、翌日レンタカーで高千穂〜鵜戸神宮〜鹿児島へと移動。しかしこれって、相当な強行軍ではなかったかなァ、ちょっと呆れる思いです。 さて、鹿児島から帰り着いた羽田空港で日和を待ち受けているものは? どうぞお楽しみに。 1.長野−更科蕎麦とモンブラン/2.名古屋−きしめんとあんかけスパ/3.東京お土産宴会−手羽先とフルーツタルト/4.高知・愛媛−鰹のたたきと鯛飯/5.宮崎・鹿児島−鹿児島ラーメンとかき氷 |
「ひとり旅日和−幸来たる!−」 ★ | |
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“ひとり旅日和”シリーズ第5弾。 これまで毎回楽しみに読んでいたのですが、今回は余り面白くなかったというか、余り楽しめず。 そのため何故だろうか、と考えてみました。 ひとつには、訪れた先でいつものようにレンタカーを利用しているので、“旅”という雰囲気、情緒が余り感じられません。ただ観光地巡りをしているだけ、という印象になりがち。 また、訪れた先で定番のように日和は、日本酒、食べ物を堪能していますが、私はお酒類を全く飲まないのでかえって旅への興味を削がれてしまう、という感じです。 なお、本巻での重要ポイントは、蓮人が九州に転勤になったと麗佳から知らされ、日和と蓮人の関係はどうなるのか?という点。 まぁ、なるようにしかならない、ということでしょう。 ※最終章で蓮人、自分に賭けをしたと言いますが、日和の気持ちを無視してのものであり、私は失礼なことだと思いますが、皆さんはどう思われるでしょうか。 さて、本シリーズの面白さ、次巻で盛り返しがなるのかどうか。 1.能登−極上刺身定食/2.妙高−ドロエビと新潟味噌/3.村上・新潟−村上牛と日本酒呑み比べ/4.山口−瓦そばとフグ |
「深夜カフェ・ポラリス Late Night Cafe Polaris」 ★★ | |
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これまで読んだ秋川滝美作品は“ひとり旅日和”シリーズのみなのですが、他のシリーズはいずれも“料理+温かみのある人間ドラマ”という感じのようです。 本作は、行き詰ってしまった人、疲れ果てた人が深夜カフェ<ポラリス(北極星)>に明るく迎え入れられ、そこで温かく美味しい食事と店主の気さくな言葉に励まされ、前に進む気持ちを取り戻すという連作ストーリーですが、従来のシリーズと同一線上にある物語といって良いかと思います。 本作の特徴は、深夜、腹を空かせた主人公たちがふと迷い込んだ場所が、“深夜カフェ”であるという点。 その“ポラリス”があるのはビルの3階。その明かりにふと引き込まれるようにして、各章の主人公たちが扉を開きます。 店主は30代前半らしい、明るくてタメ口の女性=朱里。 深夜とあって客は、主人公だけというケースが殆ど。メニューも和食セットと洋食セットの二通りだけですが、時々賄い料理を振る舞ってくれることもあります。 さて、各章の主人公たちはどうやって心を癒されるかというと、やはりそこは減ったお腹に入り込む家庭的な料理、ということに尽きるようです。 ・「夜更けのぬくもり」:5歳の息子の世話に疲れ果てているシングルマザー。 ・「明けない夜」:医師をめざす気もないのに親の母校&医学部受験を強制されている2浪生。 ・「妻の決断」:家事を全く手伝わない夫に嫌気がさしている介護職女性。 ・「通院患者の迷い」:検査入院を指示されて怯む老経営者。 ・「医師の悩み」:激務に疲れ果てている友人の女医。 なお、5篇中では嫁と姑、2人の嘆きを描く「妻の決断」が抜群の面白さ。 夜更けのぬくもり/明けない夜/妻の決断/通院患者の迷い/医師の悩み |