我孫子武丸作品のページ


1962年兵庫県生、京都大学文学部哲学科中退。在学中は京都大学推理小説研究会に所属。89年「8の殺人」にて作家デビュー。

  


     

●「眠り姫とバンパイア」● ★★


眠り姫とバンパイア画像

2011年03月
講談社刊
(2100円+税)

  

2011/04/06

  

amazon.co.jp

“かつて子どもだったあなたと少年少女のための−ミステリーランド”シリーズ作品
小学5年生の女の子=
相原優希と、新たに彼女の家庭教師となった大学院生=荻野歩実の2人が、交互に第一人称にて語っていくストーリィです。
話の持っていき方、話の運び方が上手い! ので面白い。

居眠りすることが多いことから父親に“眠り姫”と呼ばれていた優希、今は母親と2人暮らし。
父親と離れ離れになって3年、父親が恋しくてたまらない優希ですが、母親が懸命になって働いている姿をみていて、父親のことを口にしてはいけないと我慢しています。
11歳になってようやく携帯電話を与えられ、父親にメールすることができるようになって、ようやく父親が夜遅く、母親に内緒で会いに来てくれます。
家庭教師となったばかりの歩実、優希からそのことを打ち明けられますが、ちょっと心配になります。
折も折、優希の通う小学校では最近、不審な人物への注意喚起がなされた一方、子供たちの間に
吸血鬼(パンバイア)伝説が広まっている。
優希に会いに来たのは、本当に彼女の父親なのか。そして、優希は何故、父親をバンパイアと思い込んでいるのか。
また、優希に会いに来た父親は、何故母親から目撃されなかったのか。
伏せられた家族の秘密に接した歩実は、優希のため、真相を明らかにしようと決意します。

友達もおらず父親に会いたくてたまらない女の子、眠り姫である謎、大男の家庭教師、吸血鬼・バンパイア、見えない男と、本書ストーリィを構成するそれらピースの全てが面白そう、わくわくします。
解き明かされてみれば謎は単純なものだったと言えますが、ミステリそのもの、ならびにその原因は結構凝っていて、大人も子供も楽しめるという点で本シリーズにぴったりのミステリです。

切ないストーリィでもあるのですが、読後感としては楽しいミステリ。楽しいミステリ好きの方にお薦めです。

 


  

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