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「リリアンと燃える双子の終わらない夏」 ★★ 原題:"Nothing to see here" 訳:芹沢恵 |
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2022年06月
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主人公のリリアンは28歳、スーパー2軒のレジ打ちを掛け持ちして暮らしている状況で、将来に何の希望も持てていない。 そんなリリアンに、学校時代の友人で今は上院議員の3番目の妻となったマディソンから、リリアン向きの面白い仕事がある、という手紙が届きます。 マディソンの依頼に応じてその広大な屋敷に赴いたところ、マディスンから説明されたその面白い仕事とは、夫ジャスパーの前妻ジュリアが死去したためその双子を引き取ることになった、ついてはその双子の面倒をみる、というもの。 しかし、問題なのは、その双子=ベッシーとローランド、興奮すると身体が燃えだしてしまう(発火)のだという。 そのベッシーとローランド、登場場面ではかなりやっかいな子どもたちという印象なのですが、それは彼らの一面だけ。 実は普通に可愛い子どもたちなのです。それなのに厄介もの扱いされるような存在になっているのは、結局は大人たちの仕業。 その点ではリリアンも2人と似たところがあります。 それぞれ居場所を見出せなくなっていた1人+2人が、お互いに欠かせない相手として結びついていく姿を描いたストーリィ。 最近多くみられる内容ですが、血の繋がりがなくても、お互いに愛し合い、信じ合うことができれば家族として成り立つのだ、ということを改めて感じさせてくれます。 何事にも自分を正直にさらけ出すリリアン、個性的なベッシーとローランドの双子、それなりに曲者であるマディスン、その子のティモシー、世話役orお目付け役のカール、家政婦のメアリー等々、各登場人物のキャラクターが楽しい。 何といっても、<発火>という着想がユニークで秀逸です。 |