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「図書館は逃走中」 ★★ ジャーウッド・フィクション・アンカヴァード賞 |
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母親は家を出ていき、父親は息子に無関心どころか暴力を振るうばかり。 たった一人の友人サニーも引っ越してしまい、12歳の少年ボビー・ヌスクには居場所がない。 そんなボビーが知り合ったのはヴァル(ヴァレリー)と13歳のローザのリード母娘。ローザには知的障害があるらしいが、他に友達がいないボビーはすぐローザと仲良くなります。 母親のヴァルは、移動図書館トラックの週1回の掃除を請け負っている女性。 ヴァル母娘と知り合ったおかげでボビーは、移動図書館、そこに積み込まれた本と出会い、魅力に溢れた本の世界を知ることに。 ところがボビーがいじめっ子3人に対して行った逆襲が警察沙汰になり、ボビーは父親の暴力に怯えます。また、移動図書館閉鎖の連絡も届き、ヴァルは背中を押されるようにボビーとローザを連れ、移動図書館トラックを運転して逃走を開始する、というストーリィ。 逃走したからといって何かが解決する訳ではない、というのは当然のこと。それでも逃走の道をとったヴァル、ボビーの切なさが胸を打ちます。 それでも逃走中の経験を経て、次第にボビーが成長していく姿を見ることが出来るのは嬉しいこと。 ボビーは「トム・ソーヤーの冒険」を引用しますが、ボビーのこの冒険旅はむしろ「ハック・フィンの冒険」に比べるべきものでしょう。 そして、彼らの間に家族としての連携が生まれていくのと並行して、ボビーが抱えていた秘密も明らかになります。 ボビーとサニーの友情ぶりも度肝を抜きますが、それぞれ足りないものを抱えている登場人物たちが互いに寄り添う姿には、家族とは何なのかということを改めて感じさせられます。 最後、決着がつかないまま終幕するのは残念ですが、彼らの今後に幸在らんことを祈ります。 |