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Jo Walton SF作家、詩人。1964年英国ウェールズ生、ランカスター大学卒。2002年カナダに移住。02年ジョン・W・キャンベル新人賞、04年「ドラゴンがいっぱい!」にて世界幻想文学大賞、06-08年発表の<ファージング三部作>第二部「暗殺のハムレット」にて08年プロメテウス賞、11年「図書室の魔法」にてヒューゴー賞・ネビュラ賞・英国幻想文学大賞を受賞。 |
「図書室の魔法」 ★★ ヒューゴー賞・ネビュラ賞・英国幻想文学大賞 |
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2014年04月
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15歳の少女モリは、精神を病んでいる母親の悪意から逃れ、一度も会ったことのない父親の元に身を寄せますが、伯母たちの意向により女子寄宿学校に入学します。 しかし、モリにとっては学校の同級生たちも気の許せる相手ではありません。孤独の姿勢を貫こうとするモリが唯一支えとするのは、大好きなSF小説を読書に浸ること。 本書は、そのモリが書き綴る日記という想定から成る、1979年から80年にかけての5ヶ月の物語。 本ストーリィにおけるモリの状況として、実の母親が及ぼす悪意ある魔法により、モリの双子の妹は事故死し、モリ自身も片脚に障害を負う。また父方の伯母たちも魔女らしく、彼女たちに対してもモリは警戒感を緩めることはできない、と語られます。 本当にそうなのだろうか。モリの語ることのどこまでが真実で、どこからは虚構なのか。そんな疑いを捨てることはできません。本書の冒頭でモリ自らこの日記が虚構である可能性を示唆しているのですから。 そんなことがあっても本書が楽しくてならないのは、主人公のモリが相当な本好きであり、数多くのSF小説を読み倒している読書家であり、本こそを唯一の拠り所、自分の力の源としていること。さらに面白いのは、モリが信用する相手は自分と同じ本好きであること。つまり本がそのまま相手の試金石になっているのですから、面白い。 次から次へと飛び出してくるSF小説の題名等々、その夥しいことといったら、楽しいやら呆然とするやら。 何はともあれモリが自分の居場所を見つけるのも、信用できる相手を見つけるのも、読書あってこそ、というのが本好きにとっては堪りません。そんなモリの気持ちは十分理解できますから。 本好きの人向けの、本好きな少女による、その成長&闘争ストーリィ。本好きならばこそ共感も湧き、楽しめることもできるといった一冊です。 ※作中登場する小説の内、私が読んだことのある作品は本当に僅かでした。海外SF小説は余り読んでない所為があるにしろ。 |