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「少女と少年と海の物語」 ★★☆ 原題:"Girl.boy.sea" 訳:杉田七重 |
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2021年05月
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少年と少女の漂流物語です。 カーネギー賞最終候補作。 セーリング・コンテストのための訓練に出ていたビルたちは、嵐に見舞われヨットが転覆、救命ボートに乗り移りますが、ビルだけ取り残され、たった一人手漕ぎボートへ。 嵐が収まった後ビルは、樽の上に乗って漂流する痩せこけた少女を発見、ボートに救いあげます。 そこから、英国少年のビルと、ベルベル人(北アフリカの先住民族)のアーヤという2人による、数ヶ月にわたる大西洋での漂流物語が始まります。 民族も違えば、生まれ育った環境も考え方もまるで異なる2人、言葉もカタコトが通じるのみ。 中々打ち解けない2人が、反目し合いながらも時に協力し合い、困難な時を共にしていきます。 ビルが励まされ、希望を繋いだのは、アーヤが語る物語。 困難な中で人が勇気をもって生きていくためには、水や食料だけでなく、物語あるいは希望が必要なのだ、というメッセージを聞く思いです。 不毛な島への漂着、再び海へ乗り出す勇気。 お互いがいたからこそ勇気を奮い、局面を打開し続けることができたのだと、強く感じさせられます。 そうした2人の姿、人物造形が圧巻。繰り返される苦難に何度も胸詰まらせられる気がします。 その2人に加わる、最後の仲間も良いんだなァ、これが。 結末は、途中予想もしなかったものですが、人が生きている限り物語は続いていく、決して終わらない、ということを感じ取らされる、この余韻が素敵です。 ※なお、読みながら連想させられた漂流記は2作、ヴェルヌ「十五少年漂流記」と、ヤン・マーテル「パイの物語」でした。 パンドラ/太陽/陸/海/どこでもない場所/骨の道/漁師 |