ディアドラ・サリヴァン作品のページ


Deirdre Sullivan  アイルランド西部ゴールウェイ生。障害のある子供を対象にした特別支援教育の教師をしながら執筆活動。「目覚めの森の美女」にてCBI最優秀児童図書賞をはじめ、アイルランドで主要なYAの文学賞を3つ受賞。

 


               

「目覚めの森の美女−森と水の14の物語− ★★☆   CBI最優秀児童図書賞等
 原題:"Tangleweed and Brine"      訳:田中亜希子


目覚めの森の美女

2018年発表

2019年10月
東京創元社
(2200円+税)



2019/12/10



amazon.co.jp

出版社の紹介文には、「ダークで美しく力強い幻想譚」とあります。まさに、これ以上端的に本書の内容を表す言葉はないように思います。

子どもの頃から何度も親しんだあの童話が、こんなにダークな物語に一変するのか、という驚きは最初の頃だけ。
それ以上に驚くのは、本作が幾つもの児童図書向けの賞を受賞していること。即ちこの作品集って児童向けなの? ということ。

14の物語の特徴は、はっきりしています。
主人公たる女性たちは、男や父親から見下され、あるいは自由を束縛され、尊厳すら無視されている風。
それ故、彼女たちが選択する道は、王子さまに見初めてもらう、あるいは幸せにしてもらうという他力依存ではなく、自由、自分を守ることです。そのためには、時に魔女にならざるを得ない道も厭わず、という処。
その象徴的な篇が
「靴をはいた娘(シンデレラ)」であり、「食いつくすか食いつくされるか(人魚姫)」、究極的には「川床(ロバの皮)」です。

たしかに、以前から感じていたことですが、見初められて王妃の座を与えられてもいつ失うか分からない不安定なもの、現代ではハッピーエンドとは必ずしも言えないよな、と思います。

その意味で、この物語は元々どんな話だっけ?と思う程、自在に改変されており、また各篇主人公たちの行動も自由、原作に全く束縛されず、という風です。
本篇主人公たちの自由な、思い切った決断、行動(必ずしも幸せとはいえませんが)こそ読み処と思います。


−森の物語−
靴をはいた娘(シンデレラ)/きこりの花嫁(赤ずきん)/生まれておいで、愛されるために(ラプンツェル)/あなたが苦しむことはない(ヘンゼルとグレーテル)/名なしの悪魔は友だちと名乗った(ルンペルシュティルツヒェン)/フェアという名の娘(フェアとブラウンとトレンブリング)/白灰姫(白雪姫)
−水の物語−
食いつくすか食いつくされるか(人魚姫)/うまくふるまうこと(カエルの王子さま)/やさしい重み(青髭)/川床(ロバの皮)/小さな贈り物(ガチョウ番の女)/美女と盤(美女と野獣)/
−そして物語は終わる。こんなふうに・・・−
目覚めの森の美女(眠れる森の美女)

   


   

to Top Page     to 海外作家 Index