エリザベス・ストラウト作品のページ


Elizabeth Strout  1956年米国メイン州ポートランド生、ベイツ大・シラキュース大学で学ぶ。第一長篇「目覚めの季節−エイミーとイザベル−」(1998年)にて《ロサンゼルス・タイムズ》新人賞および《シカゴ・トリビューン》ハートランド賞を受賞。「オリーヴ・キタリッジの生活」(2008年)にて2009年度ピュリッツァー賞(小説部門)を受賞。《ニューヨーカー》等多数の雑誌にて短篇を発表。

1.オリーヴ・キタリッジの生活

2.オリーヴ・キタリッジ、ふたたび

 


                           

1.
「オリーヴ・キタリッジの生活」 ★★    ピュリッツアー賞
  原題:"Olive Kitteridge"
 
           訳:小川高義


オリーヴ・キタリッジの生活

2008年発表

2010年10月
早川書房

2012年10月
ハヤカワ
epi文庫

(940円+税)



2021/03/05



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米国北東部、メイン州のグロスビーという小さな港町を舞台にした、住民たち一人一人の人生模様を描く連作ストーリィ。

“町ものがたり”という点で、
アンダソン「ワインズバーグ・オハイオ」、藤沢周平「本所しぐれ町物語」、宮本輝「夢見通りの人々」に連なる作品と言えます。
ただし、人情とかユーモアといった要素は少なく、「ワインズバーグ・オハイオ」に近い作品という印象です。

総体的に眺めると、人生とは思うようにはいかないもの、堪えることも多くありますが、それでもそれに耐えながら人は生きていくもの、という気持ちが伝わって来るようです。
それでも現実を受け容れて生きていくなら、そこにはそれなりの喜びや幸せもあるということでしょうか。

題名にある
オリーヴ・キタリッジは、元中学校の数学教師で、薬局を営むヘンリーの妻。
13篇の中で主人公になることもあれば、脇役になることも、通り過ぎるだけの登場で終わることもありと様々。
また、40代から始まり、70代になったオリーヴが登場します。

こうした連作ストーリィで中心的存在であるからには人好きのする穏やかな婦人というのが一般的なのでしょうけれど、このオリーヴ・キタリッジはそれと全く正反対の人物像。大柄で無遠慮、そのうえ自分勝手なところあり、毒も結構備えている女性像、といった具合に。
その存在感、その登場があるからこそ、この町ものがたりに現実感と刺激をもたらしてくれている、と思います。


薬局/上げ潮/ピアノ弾き/小さな破裂/飢える/別の道/冬のコンサート/チューリップ/旅のバスケット/瓶の中の船/セキュリティ/犯人/川

                        

2.
「オリーヴ・キタリッジ、ふたたび」 ★★☆
  原題:"Olive, Again"
 
           訳:小川高義


オリーヴ・キタリッジ、ふたたび

2019年発表

2020年12月
早川書房

(2700円+税)



2021/03/16



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11年を経て刊行されたオリーヴ・キタリッジの生活の続編。

夫の
ヘンリーが死去した後、74歳から86歳にかけてのオリーヴが時に主役、時に脇役となって登場します。
何とオリーヴは、前作の最後で登場した
ジャック・ケニソンと再婚、やはり話し相手となってくれる人間がお互いに必要、ということでしょうか。それにしては、不満も抱くこともたまにはあるようですが、良い再婚だったようです。

前作で一旦「オリーヴ・キタリッジ」の世界に馴染んだ所為か、年代が老境ということになって落ち着きを見せたこともあるのでしょうか、前作よりじっくり楽しめた気がします(文庫本ではなく単行本ということもあるかも)。

メイン州グロスビーという小さな港町に住む人や、関わりをもつ人たちの人生を映し出すような短編集。
人生は思うに任せぬもの。だからといって不運な人生かといえばそんなことはなく、要は自分の気持ち次第、と思えてきます。
本作ではオリーヴも、主人公となる人たちの多くも、老境に至っています。だからこそ尚のこと、そう感じるのでしょう。

そうした中でオリーヴ・キタリッジは、しぶとく、したたかに生き抜いてきた代表選手、といった存在に思えてきます。


なお、本作のなかで特に胸に残ったのは、若い少女を主人公とした
「清掃」「詩人」「友人」ですが、「母のない子」におけるアンクリストファー(オリーヴの息子)に対する一喝も傑作。

逮捕/産みの苦しみ/清掃/母のない子/救われる/光/散歩/ペディキュア/故郷を離れる/詩人/南北戦争時代の終わり/心臓/友人

               


    

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