ジェリー・スピネッリ作品のページ


Jerry Spinelli 1941年米国ペンシルバニア州生。「クレージー・マギ−の伝説」にてニューベリー賞を受賞。「スターガール」はペアレンツ・チョイスの金賞、パブリッシャーズ・ウィークリー誌の「全米書店員が選ぶ2000年いちばん好きだった小説」に選ばれた。

 


   

●「スターガール」● ★★
 
原題:"Stargirl"      訳:千葉茂樹

  

 
2000年発表

2001年04月
理論社刊

(1380円+税)

 

2010/05/02

 

amazon.co.jp

マイカ高校に転校してきた不思議な女の子、スターガール・キャラウェイ(本名はスーザン)。
どんな風に不思議かというと、靴まですっぽり隠れるようなロングドレスを着てウクレレを抱え、ランチの時間にはウクレレを弾き歌を歌いながら皆のテーブルを回る、等々。
最初は奇抜な服装、行動に皆一様に度肝を抜かれるのですが、無邪気で陽気なそのムードに皆が虜になり、大人気を得る。
しかし、それが一転したのは、チアリーダーの一員として参加したバスケの試合でのこと。
怪我した相手の選手に駆け寄り介抱したことから、それ以来学校中の生徒が彼女を無視、つまりシカト。
それなのに、語り手でもある主人公のレオ、スターガールとお互い好き合って親しさは増していくのですが、それと同じく不安も増していく。
スターガールと、学校の皆、どちらかを選ぶなんてことはできない、というのがレオの深い悩み。

突拍子もない女の子が主人公、というのは児童向け物語ではそう珍しいことではないと思いますが、年代が高校生、そのうえ殆どの生徒からシカトされるというのは、稀でしょう。

人が自分をどう思うかなんて考えたこともない、人々が喜んでくれることをするのが大好き、という無私の人間が、このスターガール。
人は、自分が理解できない相手、自分がやろうと思ってもできないことを軽々としてしまう人間を憎み、潰そうとするもの。
自分らしさを守ることが大事か、それとも自分を押し殺してでも周囲に合わせることが大事なのか、それを典型的に描いた、愉快ですが切なくもあるストーリィ。

主人公のレオにしてみれば、苦味を伴う思い出を語ること。それでも、スターガールというこの少女を思うと、愉快で楽しい気持ちになってきます。

    


    

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