2002年発表
2003年9月
早川書房刊
(1300円+税)
2003/11/10
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本書はノンフィクション。知的障害者である38歳の妹・ベスと、39歳の姉である著者との1年にわたる記録です。
恋人と別れたばかり、キャリアウーマンとして仕事に追われるばかりの日々を送る著者が、ベスの挑発的な提案を受け、度々ベスと一緒に終日バスに乗る羽目になります。
生活保護を受けて一人暮らしをしているベスの楽しみは、終日バスからバスへと乗り継いで、運転手とおしゃべりをすること。
妹に近づく努力と思ってバスに乗り込んだものの、思いがけず、著者自身にも新しい世界がみえてくる。そこには、映画“フォロー・ミー”に共通する再生ストーリィがあります。
しかし、本書はそれだけで終わりません。知的障害者を妹にもった家族の物語、という一面を併せ持っています。
それは、感動とは程遠い現実のストーリィ。ベスを家族として愛しながらも、ふりまわされ、疲れ果てる父親や姉弟。そして、両親が離婚した後の家族破綻の経緯が、回想として交じり語られます。
知的障害者であっても陽気なベスですが、その一方で障害者であることを逆手にとったような意固地さ、我が儘なところがあります。現実は決して美しくはありません。
それでもなお、知的障害という問題に真摯に立ち向かおうとし、度々葛藤する著者の姿。また、ベスをありのままに受け入れるバスの運転手たちの温かさ、懐の深さに、新鮮な感動を覚えます。
読了後、本書を読んで良かったという思いがじわじわと込み上げてきます。本書はそんな一冊。
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