1998年03月
新潮社刊
(2300円+税)
1998/07/24
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これが現代ロシアの小説か、という思いがまず第一。
でも最初の2、3作を読むと、まぎれもなくロシアの小説だ、ロシア文学を継承している、と感じる世界がそこにあります。
「重心」にあるのはチェーホフのようなユーモア、人間臭さ。
「魔女の涙」と「化け物」はゴーゴリらしい伝承話を継承している。
魔女、化け物といっても、どこか愛嬌があって人間らしく、これこそロシアならではの物語。
でもそれだけではなく、現代のロシア女性の生活ぶりを感じさせてくれる作品もあります。「卒業証書」や「身内」には、ヨーロッパ社会の女性とは違った、男性と同格に自立しなければならないといった重苦しさを感じます。その原因は、やはり共産主義国家を経てきた
という歴史の結果によるものでしょう。
また、「アンデルセンのおとぎ話」では医療態勢(ここでは産科病棟)の貧しさが描かれていて、思わず愕然としてしまいます。
この1冊から共通して感じることは、女性作家それぞれが持つしたたかさ。男共よりはるかに彼女たちは逞しく生きぬいてきたに違いない。
本書の「魔女たちの饗宴」という題名は、まことに彼女たちにふさわしいと称賛せざるをえません。
1.トーカレワ 「重心」
2.サドゥール 「魔女の涙」
3.ナバートニコフ「卒業証書」
4.カテルリ 「化け物」
5.バランスカヤ 「ライネの家」
6.トルスタヤ 「夜」
7.パレイ 「アンデルセンのおとぎ話」
8.ワシレンコ 「鳴り響く名前」
9.ナールビコワ 「ターニャ」
10.ペトルシェフスカヤ「身内」
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