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「セリーナ」 ★☆ |
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私が普段読むタイプの作品ではないのですが、読む気になったのは、映画化で主役のセリーナをジェニファー・ローレンスが演じたと聞いてため。 時代は大恐慌後のアメリカ、そして舞台は雄大なアパラチア山脈の木材伐採地。その地で製材会社を共同経営するジョージ・ペンバートンが、知り合ってすぐ結婚に至った新妻セリーナを連れて帰って来るところから始まります。 2人を迎えようと駅に集まった人々の姿からして既に不穏です。何しろペンバートンによって娘レイチェルを孕まされたエイブラハム・ハーモンが、怒りを滾らせて彼らを待ち受けているのですから。 一方、新妻セリーナは若く美しく、そしてひどく冷徹。荒くれた男どもを怖れさす程の実務的な有能さ、そしてその眼力をまざまざと男たちに見せつけていきます。 何よりセリーナを特徴づけているのは、旺盛な事業欲。まるでペンバートンはその地位を見こまれ、セリーナに夫として選ばれたかのようです。 セリーナの悪女ぶりは、邪魔な存在を容赦なく排除していくところに発揮されます。 しかし、セリーナが何故そのような悪女になるに至ったかという事情が描かれていないので、必然性が感じられず今一つ。 また、主役はセリーナというよりむしろ、セリーナに翻弄されている観のある夫ペンバートン、そして孤児となった身で生まれた男の子のジェイコブを懸命に守り育てようと奮闘するレイチェルの健気な姿の方が印象的です。セリーナはむしろ脇役のよう。 ※悪女セリーナをマクベス夫人(シェイクスピア)に模す向きがありますが、それは違うのではないか。セリーナは遥にタフな女性である、と思います。 |