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Rhiannon Navin ドイツのブレーメンで育つ。広告エージェント業界で働く中でニューヨークに渡り、結婚したのちに退職。「おやすみの歌が消えて」にて作家デビュー。 |
「おやすみの歌が消えて」 ★★☆ |
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2019年01月
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米国社会で多発する銃乱射事件を題材にしたストーリィ。 「パン、パン、パン」、6歳のザックが通うマッキンリー小学校に銃声が鳴り響き、生徒や教師たちはクローゼットの中に逃げ込み震えおののきます。 事件を起こしたのは、マッキンリー小学校の警備員であるラナレスの息子ジュニア。生徒15人、職員 4人の計19人が犠牲となり、ジュニアも警察によって射殺されます。 そして、ザックの兄であるアンディ10歳も犠牲となった。 その事件以来、ザックの家はめちゃくちゃになってしまう。 ママはアンディを失ったことだけに捉われ、もうザックのことなど心配してくれない。夜寝るとき、ザックのために歌ってくれていた歌も、もう歌ってくれない。 パパとママは喧嘩ばかり。ザックの、自分を見て欲しいという声は、ちっともママに届かない。 母親の気持ちも解ります。悲しみを紛らわせるため、やたら攻撃的になってしまう。 それに対して、ザックは冷静です。死んだ兄について、両親が口にする天使のような息子ではなかった、でも・・・と正しく認識しているし、やはり悲しみを背負ったラナレス夫妻を訴えようとしている母親のことをはずかしい、と感じます。 その末に、ザックが父親にむけて口にした言葉の、何と悲痛なことか。胸が深く痛みます。 このままじゃ、すべてダメになる。ついにザックはただ一人で、<幸せのひけつ>を見つけるための任務を決行します。 事件の悲惨さ以上に、その事件が多くの人々の心をさらに傷つけてしまう、その残酷さ。そしてザックの果敢な行動に胸打たれずにはいられません。 ある人物は、こうした事件に対して、銃を持った警備員を学校に配置すればよい、と言ったそうですが、そういうことじゃないのです。銃で殺し合うというような悲しみを、そもそも引き起こしてはいけないのだということを、本ストーリィは訴えてきます。 お薦め。 |