マーティン・ミラー作品のページ


Martin Millarl 英国スコットランド・グラスゴー生。ロンドンで様々な職業を経た後作家。87年から6冊の小説を発表した後、99年マーティン・スコット名義で発表した「魔術探偵スラクサス」(ハヤカワ文庫収録)にて世界幻想文学大賞を受賞。

 


 

●「ニューヨークに舞い降りた妖精たち」● 
 
原題:"The Good Fairies of New York"     訳:村井智之




1992年発表

2005年2月
ソニー・マガジンズ刊

(1800円+税)

 

2005/05/01

いたずら妖精のお陰で妖精界だけでなく人間界も大騒動になった話と言えば、シェイクスピア「夏の夜の夢」
本書は、さしづめ現代ニューヨーク版「夏の夜の夢」騒動というところでしょう。

故郷のスコットランドにいられなくなり、偶然NYに辿り着いたのがヘザーモラグというアザミの妖精。
この2人、どちらがスコットランド一のフィドル奏者かということで争いが絶えないのですが、2人で失敗を取り戻そうとする程周囲に大騒動を引き起こします。
2人と一緒に幻覚キノコ+ウィスキーで酔っ払った挙句NYにやってきたイングランド、アイルランドの妖精たちもとんだ目に遭いますし、地元NYの中国系妖精、イタリア系妖精、ガーナ系妖精まで巻き込んで大騒動。
一方、イングランドではターラ妖精王とその部下による妖精たちへの労働賦課が問題となって抵抗運動が起こったりと、現代の妖精界は何かと騒がしい。
一方、人間界ではモルグの寄宿相手であるケリーが、唯一可憐な女性の登場人物。しかし、彼女もクローン病という重い病気を抱えていて悩みは深い。そのケリーを恋するダメ男のディニー、ちと頭のおかしなホームレスのマジェンタ等々、混乱振りは止め処がありません。

ヘザーとモラグが行動すればする程ますます混乱は深まっていくばかりのストーリィですが、読み手としてはそれはそれで楽しんでいられるという、ファンタジスティックな現代コメディ。
たまにこうした理屈なし、気軽に読めるストーリィと出会えるのも、楽しいものです。

  


 

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