アイルランドの田舎町に突然ペルシア料理店を開いた若いイラン人三姉妹を、ペルシア料理と共に描いた物語。
ずっと閉じられたままだったペーストリー店から、ある朝奇妙な、異国的な匂いが漂ってきます。
そこはロンドンからやってきて僅か5日間の奮闘で開店にこぎつけたマルジャーン、バハール、レイラーのイラン人3姉妹が開いた料理店<バビロン・カフェ>。
家主の未亡人は3姉妹を歓迎して店を貸してくれたものの、異国情緒溢れるその店の様子に警戒心を示す住人、好奇心を抱く住人と、そこはいろいろです。
町を牛耳るパブ店経営者のトマス・マクガイアは、三姉妹を“外人”と決めつけ敵対視する筆頭ですが、じきにカフェは町の人々に受け入れられていく。
とはいうものの、それなりに衝突、揉め事、いざこざが起きていきます。そもそも革命を逃れて英国に脱出したイラン人の三姉妹が、何故アイルランドのこんな田舎町にやってきて店を開こうとしたのか。そこにはそれなりの事情があり、それは徐々に明らかにされていきます。
イラン革命によって人生を変えられた亡命イラン人の姿を描くという面は否定できないものの、スパイシーなペルシア料理と共に三姉妹がバリナクロウという田舎町に溶け込んでいく様子が楽しく、心温まります。
また各章の冒頭には、マルジャーンが作るペルシア料理のレシピが付されていて、その点も興味津々。
アイルランドの田舎町の物語、でもイラン革命にも思いを馳せる物語。そして官能的なスパイスの香りに心誘われる物語、です。
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