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「時ありて」 ★★ 英国SF協会賞 原題:"TIME WAS" 訳:下楠昌哉 |
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2022年11月
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古書ディーラーのエメット・リーは、閉店する書店の本在庫の中から一冊の詩集「時ありて」を手に入れます。 1937年の刊行、著者名には「E・L」とあるだけで、出版社名の記載もなし。 そしてその本の中には、一枚の手紙が挟まれていた。 「親愛なるベン」に向けて書き出されたその手紙の差出人には、「時ありて、また時ありぬ トム」と。その二人の男性はお互いに愛し合っていたらしい。 ベンとトム、その二人はどういった人物だったのか。 それを調べ始めたエメットの前に、不可思議な事実が現れます。それは、様々な年代に撮られた写真の中に、まるで歳を取ることのない2人が写っていること。 いったい、この2人は何者なのか・・・・。 本作は、時間を題材にしたSFストーリィ。 エメットが調べるうちに色々な事実が浮かび上がってくる。 謎が解明されていくという処も興味深いのですが、時間の流れを超えてトム・チャベルとベン・セリグマンが愛し合い、互いを求め続けたという中に、そこはかとない詩情を感じます。 読み終えた後、時というものに対する余韻が深く残ります。 |