カーソン・マッカラーズ作品のページ


Carson McCullers
 1917-1967 米国ジョージア州コロンバス生。幼少期からピアノの才能に秀で、ニューヨークのジュリアード音楽院に進むが、授業料を失くして入学を断念。代わりにコロンビア大学で創作を学び、リーヴス・マッカラーズと結婚。1940年、23歳で「心は孤独な狩人」を執筆し、文学的なセンセーションを巻き起こす。その後、「黄金の眼に映るもの」(1941)、「結婚式のメンバー」(1946)、「哀しいカフェのバラード」(1951)、「針のない時計」(1961)などの小説やノンフィクションを執筆。1967年死去、50歳。

 


                 

「哀しいカフェのバラード ★★☆
 原題:"The Ballad of the Sad Cafe"     訳:村上春樹  銅版画:山本容子


哀しいカフェのバラード

1951年発表

2024年09月
新潮社
(2200円+税)



2024/10/17



amazon.co.jp

カーソン・マッカラーズという作家、本作で初めて知ったのですが、村上春樹さん、本作がマッカラーズ3作目の翻訳という。

「ひどくうらぶれた町だ」という印象的な一文から始まるストーリー。
田舎町ですが、ずっとうらぶれた町であった訳ではなく、一時期は賑やかなこともあった町。
それをもたらした人物、そして破壊した人物、都合3人の人物が絡んだ顛末、その根底にあった奇妙な相関関係が描かれます。

一人は
ミス・アミーリア・エヴァンズ。雑貨屋と醸造所を営み、町一番の裕福な女性。体格も筋肉も男性並みで、何でも一人でやってのけてしまう。ただ、人付き合いが苦手なのが欠点。
そのミス・アミーリアの元を突然訪ねてきて、居候として迎え入れられたのは、自称従兄弟だと名乗るせむし男、
ライモン・ウィリス。ミス・アミーリアから「カズン・ライモン」と呼ばれることになります。
そのライモンが何故か住民たちの間で人気者となり、雑貨屋は<カフェ>へと姿を変えます。
しかし、ミス・アミーリアがかつて結婚した相手であり、結婚してすぐ家を追い出され、犯罪者となって服役していた
マーヴィン・メイシーが、彼女に仕返しするため町に戻ってきた処から、暗雲が垂れ込めます。

ミス・アミーリア、魅力的な女性という訳では決してありませんが、そのキャラクターが傑出していて実に面白い、惹きつけられる登場人物。
近寄りがたいけれど善人であるアミーリア、典型的な悪漢であるメイシー、そしてその間でうろつくせむし男のライモンと、まるで紙芝居の中の人間関係を見るようです。

最後の結末はひどく哀しいものですが、だからこそミス・アミーリアが皆にもたらしていた賑わいが心に残ります、永遠にというくらいに。
またそれは、本物語の余韻が読者の心にも残る、ということ。

本作 150頁程の小説ですから手に取りやすい。お薦めです。

      


     

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