ヒュー・ロフティング作品のページ


Hugh Lofting  1886−1947年。英国メイデンヘッド生。土木技師としてアフリカ、南アメリカ等へ渡った後、第一次世界大戦に従軍。この従軍中に幼い子供たち(長男コリンと長女エリザベス)に書き送った物語が「ドリトル先生」シリーズの原型となった。

 


                

「ドリトル先生航海記」 ★★★
 
原題:"THE VOYAGES OF DOCTOR DOLITTLE"    訳:福岡伸一




1922年発表

2014年03月
新潮社刊

(1600円+税)

  

2014/05/25

  

amazon.co.jp

<新潮モダン・クラシックス>第一弾。
今更いうまでもなく
井伏鱒二の名訳によって知られた世界児童文学における名作“ドリトル先生”シリーズ第2巻の新訳です。

私が本シリーズを熱中して読んだのは小学5〜6年生の頃。
6年生の夏休みは、図書部ということで本の貸出係をしに午前中は学校の図書館に通ったのですが、そう忙しい訳もなく、その時間を使ってシリーズ作品を一気に読破した記憶があります。
ドリトル先生シリーズの再読はそれ以来と思っていたのですが、34年前の25歳時に岩波少年文庫で「アフリカゆき」と「郵便局」の2冊を再読していたことが判りました。
当時のメモには「動物や鳥の言葉が判って、いろいろな旅をしたり、世にも珍しいオシツオサレツ、海底の大カタツムリ、ノア時代の洪水を見た亀などの話を聞くというのは、奇想天外で面白い。むしろ、子供向けの本として限定されてしまっていることが惜しいくらいだ」と書き残していました。
また、映画でも
レックス・ハリソン主演による「ドリトル先生不思議な旅」(1967年)を観たことが忘れ難く、ストーリィはちょうどこの「航海記」が主体だったように思います。

改めて新訳で読むと、物語に古さなど少しも感じられず、スムーズに楽しめた気がします。現在に合わせて言葉遣いも改められているからでしょう。
そしてこの齢になって本書を読み改めて感じたことは、ドリトル先生というキャラクターの素晴らしさです。
それはどんな人間、どんな生き物に対しても対等に接していて、紳士的である姿勢です。その具体例としては、ドリトル先生の助手になった少年
トム・スタピンズに対してトミーとか小僧とか言わず、きちんと「スタピンズくん」と呼びかけている点が挙げられます。
また、自分の行動に対する責任感も見事なもの。具体的には、
クモサル島の住民であるインディアンたちに対し自らが行動したことの結果については最後まで責任を取ろうとする、その姿勢が挙げられます。
ファンタジー物語のようにも感じられますが、あらゆる生き物と会話が成り立つという点を除けば本作品、かなり現実的なストーリィです。

誰に対しても善意で接し常に寛容精神に溢れ、そして悪に対しては断固とした決意と態度で向かい合う。是非指導者たる人間はドリトル先生を模範として欲しいものです。
名作は改めて読んでも楽しいもの。再読を含めてお薦めです。

     

 <ドリトル先生シリーズ>
  01. 1920 ドリトル先生アフリカゆき
  02. 1922 ドリトル先生航海記
  03. 1923 ドリトル先生の郵便局
  04. 1924 ドリトル先生のサーカス
  05. 1925 ドリトル先生の動物園
  06. 1926 ドリトル先生のキャラバン
  07. 1927 ドリトル先生と月からの使い
  08. 1928 ドリトル先生月へゆく
  09. 1929 ドリトル先生月から帰る
  10. 1948 ドリトル先生と秘密の湖
  11. 1951 ドリトル先生と緑のカナリヤ
  12. 1952 ドリトル先生の楽しい家(短編集)
  13. 1932 ガブガブの本(番外編)・・・・・未読

   


      

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