|
|
「母の記憶に」 ★★ |
|
|
「紙の動物園」が好評だったらしいことは知っていますが、未読なので、ケン・リュウ作品を読むのはこの第2短篇集が初めて。 SF短篇集と思って読み始めましたが、本書はどうもそんな簡単にくくれる短篇集ではないようです。 まさしく未来、宇宙船という時代もありますが、20世紀初の日本満州侵攻時代の話もあれば、17世紀の中国を舞台にした話もあると、様々。 作者にとって、またそのSF着想において、時代設定は大した問題ではないようです。ストーリィに合わせ時代設定などまさに融通無碍、といった感じです。 あまりの変化自在に惑わされましたが、各ストーリィの奥を探ると、現代に共通する問題が見えてきます。 異民族差別・排斥、老人介護、親子、凶悪犯罪、遠隔操縦による戦争、人工知能、人間のサイボーグ化、等々。 「烏蘇里羆」は、冒頭だけに衝撃的。 「重荷は常に汝とともに」は、ユーモアに溢れて痛快。 表題作「母の記憶に」は掌篇ですけれど、忘れ難い逸品。 「パーフェクト・マッチ」は、非現実的と言っていられないところが怖い。 「残されし者」、これもまた・・・・怖い。 「訴訟師と猿の王」は清国時代の話ですけれど、まさかこんなところでいこんな人物が登場するとは! 次の2篇は中編作品、ともに読み応えたっぷりです。前者はハードサスペンス。そして後者は、特に味わい深い。 「レギュラー」は、売春婦殺人事件を追う、サイボーグの身体をもつ女私立探偵が主人公。 「万味調和−軍神関羽のアメリカでの物語」は、19世紀後半、米国に中国人労働者が多く移住してきた頃の話ですが、何とまぁ。 烏蘇里羆/草を結びて環を銜えん/重荷は常に汝とともに/母の記憶に/存在/シミュラクラ/レギュラー/ループのなかで/状態変化/パーフェクト・マッチ/カサンドラ/残されし者/上級読者のためのの比較認知科学絵本/訴訟師と猿の王/万味調和−軍神関羽のアメリカでの物語/「輸送年報」より「長距離貨物輸送飛行船」 |