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Kelly Link
 1969年米国フロリダ州マイアミ生。コロンビア大学卒、ノースカロライナ大学にて博士号取得。「黒犬の背に水」にて作家デビュー。1998年「スペシャリストの帽子」にて世界幻想文学大賞、「白猫、黒犬」にて2024年ローカス賞短篇集部門を受賞。作家活動の他、マサチューセッツ州ノースハンプトンを拠点に出版社Small Beer Pressを夫と共同経営。

 


                 

「白猫、黒犬 ★★
 原題:"White Cat, Black Dog"       訳:金子ゆき子


白猫、黒犬

2023年発表

2024年10月
集英社
クリエイティブ
(2700円+税)



2025/03
/23



amazon.co.jp

7つの童話、民話、伝承を基にした短篇集。

元の話を知っているのはグリム童話の幾つかに過ぎませんが、元の話などもう跡形もなし、そう言われても分からない、という処がかえって面白い。
それだけ現代風にかつ巧妙に書き換えられている、と言ったらよいでしょうか。
例えば「ブレーメンの音楽隊」など、残っているのはブレーメンという場所くらいなもの。

しかしまぁ、白猫に関わる不思議な世界、同性の恋人を追い求めて地獄!まで、妖異な現象、航空機内でのジョークのような話、スペースオペラ?、ある邸宅でのクリスマスにおける不思議な邂逅、死神との出会い?と、作者の想像力は止めどもなく膨らんでいき果てる処なしという雰囲気で、魅了されます。

なお、特に現代的と感じるのは、同性婚カップルが当然のものとして登場していること。
一方、登場人物がやたらマリファナを使用している処は、好ましからず。

「白猫の離婚」:次の展開が読めず、面白い。
「地下のプリンセス・ハット」:要は恋人の取り合いか。
「白い道」:終盤の展開に驚愕。
「恐怖を知らなかった少女」:結局は、笑いと?
「粉砕と回復のゲーム」:未来における人間の危機か?
「貴婦人と狐」:男性関係に奔放らしいエルスパス(裕福で既婚)、そのモットーに拍手。
「スキンダーのヴェール」:友人から紹介された留守番バイトの代行、結果的に幸運だったよなァと思う処です。

白猫の離婚(フランスの童話「白猫」より)/
地下のプリンス・ハット(ノルウェーの民話「太陽の東 月の西」より)/
白い道(グリム童話「ブレーメンの音楽隊」より)/
恐怖を知らなかった少女(グリム童話「こわいことを知りたくて旅に出かけた男の話」より)/
粉砕と回復のゲーム(グリム童話「ヘンゼルとグレーテル」より)/
貴婦人と狐(イングランドの伝承「タム・リン」より)/
スキンダーのヴェール(グリム童話「しらゆきべにばら」より)

      


     

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