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「神さまがぼやく夜」 ★★☆ |
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何と言っても着想と設定がお見事。こうしたウィットのあるユーモア、好きですねぇ。 現宇宙を創造した後、新しい宇宙の創造作業に熱中していた全知全能の神さま、堅物の秘書といった感じの使徒ペテロに問題を指摘され、久々に現宇宙に目を向けます。 どうせならと自身でさっそく地上世界へリサーチに出向いた神さま、現在の人間界が予想もしなかった様相に変わっていることに気付き戸惑います。あわよくばマリア以来のお楽しみをと思っていたら平手打ちを喰ったりと、思いに任せません。 そのうえイエスはもう一度地上におりて人間の救済活動に再挑戦したいと願い出て来れば、マリアもまた自分たちの子供のことを考えてやってほしいと押し掛けてくるし、悪魔は神さまを挑発するような行動に出る、等々。 それにもまして神さまを戸惑わせるのは勿論人間の行動です。いったいどこで創造を間違ったのやら、と。 いったい神さまはどのような考えで人間を創ったのか、また天国や人間にどんなことを期待していたのか。作者の想像力は縦横無尽に駆け巡り、読み手を苦笑させること度々。 そんなドタバタ風コメディ劇の中に、強烈な社会風刺を差し込んでいる処が、本作品の魅力でしょう。 神さまばかり頼り、神さまの所為にばかりしていてはいけない、でも神さまの責任だって無いとは言えない筈、そんな融通無碍なストーリィ。 まずは、この巧みで奇想天外なユーモア譚をどうぞお楽しみください。 |