ハーパー・リー作品のページ


Harper Lee  1926〜2016年。米国アラバマ州モンローヴィル生。ハンティンドン・カレッジからアラバマ大学に転入して法律を学ぶ。60年「ものまね鳥を殺すのは」にて作家デビュー、同作にてピュリッツァー賞を受賞。62年同作の映画版にてグレゴリー・ペックがアカデミー主演男優賞を受賞。
2015年同作の20年後を描いた「さあ、見張りを立てよ」が発表されるや、世界的ベストセラーに。2007年大統領自由勲章を受賞。

 


             

「ものまね鳥を殺すのは−アラバマ物語〔新訳版〕− ★★★  
 原題:"To kill a mockingbird"    訳:上岡伸雄    ピュリッツァー賞




1960年発表

2023年06月
早川書房

(3600円+税)



2026/04/03



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名作映画「アラバマ物語」の原作。たまたま目につき、図書館から借り出して読むに至りました。

舞台は1930年代のアメリカ南部、アラバマ州のメイコムという架空の町。
主人公は
スカウトと呼ばれる少女。母は早くに病死しており、4歳上の兄ジェム弁護士の父アティカス・フィンチ、通いの料理人である黒人女性カルパーニアがその家族。
フィンチ家の近所、伯母ミス・レイチェルの元に
ディルという少年が夏休みの間だけ滞在しに来た処から物語は始まり、子どもたちの3年間が描かれます。

大きな事柄は二つ。
一つは、ディルが言い出し、フィンチ家の隣人で家に閉じこもったままである
「ブー」・ラドリーの姿を何とか目にしようと3人が動き回ります。
もう一つは、娘をレイプしたと
黒人青年トム・ロビンソンが訴えられ、父アティカスが弁護を引き受けます。ただ、黒人を蔑視する旧弊な南部社会、弁護自体が至難のことであるだけでなく、アティカスの身に危険が及びますし、子どもたちにもその影響が及びます。

ただし、本作は上記二つの事件に留まるものではなく、当時の南部田舎町の実態を様々に描き出した処に価値があります。
「ニガー」と呼び黒人を人間扱いしない白人社会の差別意識は酷いものですが、白人社会の中においても階級意識を根強くもっている人たちがいます。
言ってみれば、正しいことが正義として成立しない、アンフェアな社会。
そうした中でアティカスは、誰に対しても穏やかで公平な姿勢を崩そうとせず、フェアであることを貫こうとします。
スカウトとジェムは、ロビンソン事件を機に、フェアであることを貫く難しさ、現実の非道さを目の辺りにして学び、成長していきます。

1960年発表の作品ですが、読んでみるとスカウトやジェムたちの感覚の瑞々しさは少しも色褪せず、集団になった時の人間の恐ろしさは現代にも通じることと思います。
子どもたちの視点から描いてる点が秀逸。子どもたちは未来を変えていく力をもっているのですから。
そして裁判シーン、やはり素晴らしい。 傑作です。

※映画化 → 「アラバマ物語」  

   


    

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