書簡体小説においては、登場人物の心の内がはっきり表されるので、たまに読むと読み応えを感じるものですが、本作品の場合はなんと冷蔵庫の扉に貼られたメモ!
産婦人科医として働く離婚女性の母親は仕事に追われ、一人娘のクレアとすれ違ってばかりでろくに話をする間もない程。
おかげで必然的に母からクレアへ、またクレアから母へ連絡したいことは、冷蔵庫の扉の上にマグネットでメモとして貼り付けられることになります。
15歳の少女らしく学校、そしてボーイフレンドとの付き合いに忙しい娘。多少我がままをはることもありますが、たいていは母親の言いつけどおり家事も分担して引き受けているクレアは、健気な女の子という印象です。それに対して産婦人科医の母親の方はとにかく忙し過ぎるみたい。
前半は、すれ違うこと多いながらも2人で協力し合って暮らしている様子に、和気藹々とした母娘関係が感じられます。
ところがその母親の身に突然、生死に関わる病が・・・。
それ以降のメモからは、時に寄り添い、時に食い違いをみせる2人の姿が緊迫感をもって感じられるようになります。
ひとつひとつのメモ=短い文章であるからこそ、なおのこと2人の懸命な思いに圧倒されます。
メモからなる小説ですからあっという間に読み終わってしまいます。
それでも、「メモ」という道具を使ったからこそ表現される最後のメッセージがもたらす感動、また母親の強さを娘のクリアがしっかりと受け継いでいることを表す「追伸」となる手紙に、素直に感動を覚えます。
1月−あなたのなかに/3月−理想の女性をみる/6月−強くてたくましく/9月きれいでしなやか/追伸−愛しています
|