ニコール・クラウス作品のページ


Nicole Krauss  1974年米国ニューヨーク生。スタンフォード大学卒業後、オックスフード大学・ロンドン大学にて学位取得。2003年処女長篇「2/3 の不在」がロサンジェルス・タイムズの“ブック・オブ・ザ・イヤー”に選ばれ、一躍全米の注目を浴びる。「ヒストリー・オブ・ラヴ」は第2作。

 


 

●「ヒストリー・オブ・ラヴ」● ★★☆
 原題:"The History of Love" 
       訳:村松潔




2005年発表

2006年12月
新潮社刊

(2200円+税)

 

2007/01/11

 

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ナチスに蹂躙されたポーランドから脱出し、NYでずっと孤独な生活を過ごしてきたレオポルド・グルスキはもう80歳。
かつての恋人アルマ、彼女の産んだ息子と父子の対面もできぬまま2人は既に死し、レオももはや死を迎えるのみ。
そんな時期になって突然、レオは60年前に自分がアルマのために書いた小説「愛の歴史」が、いつの間にか本となって人に読み継がれていたことを知るのです。
一方、「愛の歴史」に登場する女性から名前をとって“アルマ”と名づけられた14歳の少女アルマ・シンガーは、その本を読んでアルマは実在の女性に違いないと信じ、その女性の行方を探し始めます。

老人レオが主人公となる部分と少女アルマが主人公となる部分が入り混じり、さらに過去と現在、小説の中の世界が入り混じるためもうひとつ捉え難く、波に乗り切れなかったのは最終場面の直前まで。
その後、最後の最後になってようやく本作品の魅力、感動が胸に迫り、読んでいる最中より読み終わった後の余韻に酔いしれるといった風。
レオにとって「愛の歴史」は自身の成功のために書いたのではなく、アルマとの愛を成就するために書いたものであることが、最後になってストンと腑に落ちます。
原作者として正当に評価されなくても、レオの作品は長い年月を越えて人と人を繋ぐという役割を見事に果たしたのです。

最後の最後、頁を1頁1頁をめくる毎にドキドキする気持ちは高まっていきます。
たった一つの小説、それが長い年月を経て人と人とを繋ぐというストーリィには、奇跡のような感動を覚えます。それが何とも素晴らしい。

     


 

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