カレン・キングズベリー作品のページ


Karen Kingsbury  「ロサンゼルス・デイリー・ニュース」紙の記者を経て、「ピープル」誌に寄稿。“赤い手袋の奇跡”シリーズは現在第4作まで刊行。

 
1.
赤い手袋の奇跡−ギデオンの贈り物

2.マギーの約束−赤い手袋の奇跡−

3.赤い手袋の奇跡−サラの歌

 


 

1.

●「赤い手袋の奇跡−ギデオンの贈り物 」● ★★
 原題:"THE RED GLOVES SERIES Gideon's Gift"      訳:小沢瑞穂




2002年発表

2006年10月
集英社刊
(1300円+税)

 

2007/11/09

 

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感動的なクリスマス・ストーリィ、<赤い手袋の奇跡>シリーズの第1作。

癌(白血病)で移植手術をするほか助かる道のない少女、ギデオン・マーサー。しかし、両親と弟の一家は貧しく、ギデオンの治療費負担が重くのしかかっている。
一方、他人を近づけようとせず、いたいけなギデオンにも平気で罵る中年ホームレス、アール・パジェット
本書は、そんなギデオンとアールの出会いと、ギデオンがアールに贈ったささやかなクリスマス・プレゼントから生まれた“クリスマスの奇跡”を描いた短い物語です。

「クリスマスの奇跡は、信じる人に起きる」と教わったギデオンんは、笑うことも神を信じることも忘れたアールに、もう一度神を信じて欲しいと願います。
そのためにギデオンは、僅かな手伝い仕事で稼いだお金でささやかなプレゼントをアールに贈る。
そしてそれは実際、信じ難い奇跡をアールに、そしてギデオンにもたらすことになるのです。

ささやかでシンプル、純粋無垢なストーリィだからこそ、かえって感動は大きい。
奇跡そのものより、神を信じること、信じることから奇跡は生まれるのだと信じることこそ、尊いと感じます。
最後には、こみ上げてくる感動に胸熱くなります。心洗われる、素敵なクリスマス・ストーリィです。

 

2.

●「マギーの約束−赤い手袋の奇跡−」● ★★
 原題:"MAGGIE'S MIRACLE"      訳:小沢瑞穂




2003年発表

2007年10月
集英社刊
(1400円+税)

 

2007/11/10

 

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感動的なクリスマス・ストーリィ、<赤い手袋の奇跡>シリーズの第2作。

主要な登場人物は3人。
ジョーダンは、父親に死なれ、地区検事である母親は忙しく、寂しい思いを抱えている8歳の男の子。父親のいない寂しさから、クリスマスにパパをプレゼントして欲しいと神様に手紙を書きます。
その母親ミーガンは、子供の頃父親に見捨てられ、さらに亡夫からも結局愛されることはなかったというトラウマから、愛を信じることができないでいる女性。
そしてもうひとり、カフェを経営するケイシーは、妊娠中だった最愛の妻エイミーに死なれ、この2年間を悲しみと共に過ごしてきた男性。
そんな3人が出会うことになったのは、片親か両親を亡くした子供たちと善意の大人をペアにする<ヒーリング・ハーツ>という新企画のおかげ。
ジョーダンとケイシーは、2人の出会いから大きな喜びを見出します。そして2人は、ミーガンに愛を信じられるようになって欲しいと願うのです。
そんなミーガンにも、少女マギーだった頃にたった一度、いつか「決して裏切らない愛」が訪れる、奇跡が起きると信じさせてくれた男の子との出会いがあったのです。
果たしてこの3人にクリスマスの奇跡は起きるのか?

ギデオンの贈りものに勝るとも劣らず、この第2作も素直に感動できる、心温まるストーリィです。
「ギデオン」が2人の物語だったの対して、本書は3人の物語と言って良いでしょう。
そしてまた、「ギデオン」のような“信じ難い奇跡”ではないけれど“心から嬉しく思える奇跡”であり、さらに親しみやすく、もっとまとまりのいい感動ストーリィです。
どちらがより良いということはなく、どちらもどちらなりに感動的。そんな2作をまとめて読めたのはとても嬉しいこと。

クリスマスには、クリスマス・ケーキより、奇跡を信じることのできる、心温まる感動ストーリィの方がやはり相応しい。

  

3.

●「赤い手袋の奇跡−サラの歌 」● ★☆
 原題:"SARAH'S SONG"      訳:小沢瑞穂




2004年発表

2008年10月
集英社刊
(1400円+税)

 

2008/12/08

 

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感動的なクリスマス・ストーリィ、<赤い手袋の奇跡>シリーズの第3作、三部作完結篇。 

老人ホームに入居していて死期間もない老女、サラ
彼女が思い出して止まないのは、13年前に死去した愛する夫=サム・リンデマンのこと。
彼女がクリスマスの度に行なう神聖な儀式は、彼女の人生を決定することになった12の言葉(転機)を、毎日1言ずつの紙飾りに書いていくというもの。
そして今年、愛する人と送る幸せな人生をサラにもたらしてくれたその大切な言葉を誰かに伝えようとしている。
一方、ホームの介護士であるベス・ボールドウィンは、結婚生活に失望し、娘のブリアンナを連れて夫のボビーと別居しようと決意していた。

愛する人と別れるという過ちを犯した若いサラが、どうして再び愛を手に入れることができたか、というのが主ストーリィ。
じーんとさせられる場面は確かにありますが、月並みで出来過ぎのラブ・ストーリィという印象もぬぐえません。
もうひとつ、前の2作は子供が一方の主役でしたが、本作では脇役でしかないところも、クリスマス物語としては物足りないように感じます。
それでも、サラがベスに伝えたのは、いろいろな場面に共通する言葉、そして我々も時折思い出してみるべき大切な言葉であることは間違いありません。

        


 

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