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Kim Choyeop(金草葉) 1993年韓国生、浦項工科大学化学科卒、同大学院で生化学修士号を取得。在学中の2017年、第2回韓国科学文学賞中短編部門において、「館内紛失」にて大賞、「わたしたちが光の速さで進めないなら」にて佳作を受賞し、作家活動をスタート。 |
「わたしたちが光の速さで進めないなら」 ★★ 原題:"If we can't go at the speed of light" 訳:カン・バンファ、ユン・ジョン |
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2020年12月
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韓国でベストセラーとなったSF短篇集とのこと。 内容は確かにSF。未来であり、地球から宇宙へと広がった時代を描くストーリィ等々です。 けれど、不思議とSFという感覚はあまり覚えません。 各篇から強く感じるのは、別離だったり、立ち去る人の見送りだったりと、そこには寂しさや哀感が漂います。 そうした想いに、現代も未来も変わりはない筈。 舞台はSFであっても、そこに描かれているのは現代と変らぬ問題、と感じるからでしょう。 現実に、各篇ストーリィでは、差別や孤独や母子問題が描かれていますから。 ひんやりとした清新さ、それと同時にどこか懐かしい、という想いも抱かされるSF短篇集。 ・「巡礼者たちはなぜ帰らない」:ユートピアと言える村から、なぜ主人公は飛び立っていったのか・・・。 ・「スペクトラム」:宇宙船事故から40年後に救出された祖母。自分は異星人に出会ったと孫に語るのですが・・・。 ・「共生仮説」:天才少女が絵として描いた惑星、やがて絵にそっくりの惑星が発見されるのですが・・・。 ・「わたしたちが光の速さで進めないなら」:宇宙船の出発をずっと待ち続ける老女。その胸の内にあるものは・・・。 ・「感情の物性」:感情そのものを造形化したという製品。その是非は・・・。 ・「館内紛失」:図書館に保存されていた筈の亡母のマインドが見つからない・・・いったい誰が何のために? ・「わたしたちのスペースヒーローについて」:宇宙飛行士としてヒーローだった筈のおば。なぜ彼女は、期待を裏切るよう行動をとったのか? 巡礼者たちはなぜ帰らない/スペクトラム/共生仮説/わたしたちが光の速さで進めないなら/感情の物性/館内紛失/わたしたちのスペースヒーローについて |