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●「白い犬とワルツを」● ★★ |
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1995年3月
2001/10/23 |
刊行当時、本書はそれ程売れた本ではなかったそうです。ところが、千葉県の某書店の副店長が手書きの推薦文を添えたところ、あれよあれよという間に売れ出し、全国的なヒット作になったのだそうです。 そんな本のヒット話は楽しいものです。その話を聞いただけで、本書を読みたくなりました。 愛妻コウラに先立たれ、サムは一人きりになります。サム自身も歩行器に頼らないと歩くことができないような老人です。すぐ傍に娘たちが住んでいるとはいえ、寂しさを振り払うことはできません。そんな老人サムの前に、白い犬が姿を現すようになります。しかし、この白い犬の姿を、サム以外の人は目にする事がありません。 本書の良さは、年老いたサムが送る日々の平穏さにあります。 サムは、その子供・孫たちが多く近所に住まい、幸せな状況にあるといえますが、それでも娘たちにあれこれ世話を焼かれることは煩わしい。そんな彼の側に寄り添う存在として、いつしか姿を現すようになった白い犬は、まさに格好の相手です。 この白い犬の正体を云々することは無用のことでしょう。今までの人生を実直、誠実に生きてきたサムという人間に対する、人生晩年の贈り物、ご褒美と受け止めておけば良いのではないかと思います。 サムとサムに寄り添う白い犬との平穏な日々、そのハーモニーが気持ちよく心に伝わってくる一冊です。 そろそろ老後について考えるようになった年代にとっては、深く感じ入るものがあります。 |