ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品のページ


Diana Wynne Jones 1934英国ロンドン生。オックスフォード大学で学ぶ。73年「Wilkins' Tooth」にて作家デビュー。「魔女と暮らせば」にてガーディアン賞を受賞。英国を代表するファンタジー作家。

 
1.
うちの一階には鬼がいる!

2.わたしが幽霊だった時

3.九年目の魔法

 


   

1.

●「うちの一階には鬼がいる!」● ★★☆
 原題:"THE OGRE DOWNSTAIRS"      訳:原島文世

 


1974年発表

2007年07月
東京創元社刊

(2000円+税)

2012年07月
創元推理文庫化

 

2007/09/12

 

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母親のサリージャック・マッキンタイアと再婚。おかげでキャスパー、ジョニー、グウィニーの3人はマッキンタイア父子と家族になったのですが、義父となったジャックは子供嫌いで横暴、かつ高圧的。おまけにダグラス、マルコムという息子たちもひどく感じが悪い。3人はジャックを毛嫌いし、“鬼”と呼び始めます。
そのジャックがジョニーとマルコムに化学実験セットをプレゼントしたと思ったら、なんとこれが“魔法生成化学/魔術舎製造”なる代物。さっそく実験を始めた3人、そして2人はとんでもない騒動に巻き込まれることになります。

先に読んだ2作品は複雑で判り難いものでしたが、本書は初期作品の所為か、ドタバタ喜劇的ユーモア・ファンタジーといった判り易いストーリィ。
まず、義父をつかまえて“鬼”呼ばわりするところが凄い。その一言で本書に惹き込まれました。
それにしてもまぁ・・・空を飛んだり、身体が縮んだり、2人が入れ替わったりと、なんと騒動のタネが尽きないことか。
単純な笑いの中に実は周到なストーリィが仕組まれているところは流石、と言うべきでしょう。
愉快なファンタジーを繰り広げつつ、親同士の再婚によって2つの家族がひとつにまとまるまでの困難な道のりを鮮やかに解決してみせた家族物語。

ファンタジーという夢を味わえたうえに笑い転げ、さらに心温まる展開に気持ち良く満足できたのですから、読み終えた後に拍手喝采するのは当然のこと。

 

2.

●「わたしが幽霊だった時」● ☆
 原題:"THE TIME OF THE GHOST"      訳:浅羽莢子

 


1981年発表

2004年11月
東京創元社刊

(1900円+税)

 

2007/08/18

 

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表紙裏に、
「ふと気がついたら、あたし、幽霊になっていた!」
「家に帰ってみると、大っきらいな姉さんや妹たちは相変わらずけんかしてる」
「そしてついに奇人変人ぞろい、個性ゆたかな四人の姉妹がひとつにまとまり、一丸となって事態にたちむかう」
「七年の時空を行き来して自分自身をさがしもとめる少女(幽霊)の大冒険」

とかなり説明されているのですが、それでもなお、最後までストーリィがよく理解できなかった作品。
こういうの、ホント、疲れます。

仲の悪い四人姉妹。どうもその原因は男子寄宿学校を経営している両親が四人を放ったらかしにしている所為。両親から愛情が示されることがない、というのが姉妹の一番の問題らしい。
そして幽霊になったその一人、自分がその内の誰だか判らない、というのですからストーリィが混迷するのも当然のこと。
遊び半分にモニガンという悪神を考え付いたところ、その悪神の所為で姉妹の一人が7年後危険にさらされる、というのがストーリィの鍵。そして仲の悪かった姉妹が、7年後に姉妹愛を発揮して危機を回避するというのが、大まかなストーリィ。

しかし、本当にこの物語は判り難い。楽しむどころか、???の連続でちょっと軽く読み流すともう判らなくなる、という次第。
ストーリィそのものが、魔術みたいでした。

           

3.

●「九年目の魔法」● ★☆
 原題:"FIRE AND HEMLOCK"      訳:浅羽莢子

 


1984年発表

1994年09月
創元推理文庫
第3版
2001年09月
(940円+税)

 
2001/01/12

 
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大学生のポーリィは、ふと自分に記憶に食い違いがあることに気がつきます。何故なんだろう? 過去を振り返ったポーリィは、9年前に偶然加わることになった葬式、そこでトーマス・リンというチェロ奏者に知り合った時から違いが生じていることに気がつきます。
本書は、少女ポーリィの成長物語と、ポーリィとチェロ奏者2人の9年間にわたる魔女との闘いを描いた、ファンタジー小説(現代魔法譚)です。

しかし、読んでいる間もうひとつストーリィを掴みきれなかったというのが、正直なところ。
現実と空想あるいは魔術が入り乱れて進行していくという構成の故もありますが、読み急いでしまった所為もあるかもしれません。漸く面白さを感じたのは、もう幕切れ近くなってから。

そんなストーリィを別にして、本書に強く惹かれる点は、主人公ポーリィの成長していく姿です。
父親と母親の双方に見捨てられ祖母の元で育ちますが、そんな状況に負けず、勇敢に雄々しく自分らしく成長していく姿がとても印象的です。友達付き合い、トーマス・リンを初めとする大人達との付き合い等々、ポーリィには惚れ惚れさせられます。
魔法譚というより、少女の成長物語として読むのが相応しい作品です。

  


 

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