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「そして山々はこだました」 ★★☆ |
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アフガニスタン人家族の3〜4世代に亘る物語。 始まりは1952年、貧しい一家に生まれた幼女パリが、金持ちのワーダティ家に養女として売り渡されるところから始まります。 実母がパリを産んだ直後に死去したため、兄のアブドゥラが親代わりとなってパリを育てます。 兄のアブドゥラは愛する妹パリと引き裂かれたことを生涯忘れることはありませんが、まだ3歳と幼かったパリは実の家族のことは直に忘れ去り、ワーダティ夫婦を両親として育つ。 長大な物語です。堅い絆で結ばれていた兄妹は、いつか再会することができるのか。 本書を読む原動力はそのことへの関心なのですが、ストーリィ展開は時間を前後し、さらに様々な人物を主人公としたドラマが織り成すように入り込みます。 少々なりとも困惑する気持ちがないとは言いませんが、相互にどこかで絡み合うところがあります。 内乱、ロシアの侵攻、タリバン、北部同盟と米軍の侵攻。そしてパキスタンでの難民キャンプ暮らし、亡命・・・・。 また、アブドゥラとパリという兄妹を中心軸としながら、バシリ家のティムールとイドリス、アデルとゴーラムという少年同士、ギリシャ人のマルコスとタリア等々、対となる2人を主人公としたドラマも作中物語として描かれます。 貧しいアフガン人兄妹の物語を描くには、その2人を描くだけでは十分ではなく、アフガニスタンという土地、そこに生きる人々の姿も描く必要があったのではないか。 この兄妹の物語、長大ではあっても、アフガニスタンの人々が味わった苦衷の一面でしかなく、まだまだ知るべきことは多いということを感じる次第です。 |